中在家長次の惨劇



※現パロ
 長次目線
 『中在家長次の嘆嗟』の続き。



眩しい日差しで目を覚ます。気持ちのよい朝だ。少し身体が軋んではいるが。起き上がり大きく伸びをすると、見慣れない景色が目に映る。2、3回辺りを見回し、ちょうど真後ろを向いたときに目に入ったのは時計。
07:00
………。
!?
焦る頭で記憶を辿るがどうしても酒を口にした後が出てこない。おかしい。あれしきで酔いつぶれたのか?いや、そんなはずはない。自分で言うのもなんだが俺は酒に強い。宅飲みですら割り勘を認めてもらえない程には。どうしても納得いかず、唯一飲んだ覚えのあるものに目をやる。やはり度はそこまで高くない。…何か違和感を感じた。もう一度ビンを持ち上げ見てみると、注ぎ口周辺に白い粉?

…そうかそうか、……一杯盛られたんだな。残念なことに心当たりがある。今や医者として生計を立てているウサギの皮をかぶった狼もとい魔王なら危ない薬をパクっ…貰ってくるぐらいたやすいはずだ。甘く見ていた。酒の力で箍が外れた伊作は普段の不運の憂さ晴らしも兼ねて思い付く限りの地味に堪えるイタズラ(では済まないものもあるが)を仕掛けたのだろう。きっと冷蔵庫に安全に食べられるものなど残されてはいまい。
まあ、そんなことはどうでもいい。小平太の胃なら大丈夫だ。根拠?そんなものない。とにかく、俺は帰らなくてはならない。家に帰る時間、学校までの時間を考えると、車を飛ばしたとしても着替えるので精一杯だ。屍達の仕事?
そんなもの知らん。自業自得だ!

ガチャガチャと床の上の缶やビンで大きな音を立て七松家を飛び出した。その音で目を覚ました5人の半悲鳴に見送られながら。

行きの3割増しのスピードで家を目指す。他の車がいない道での信号無視ぐらい可愛いもんだと思って欲しい。

自宅のマンションのエレベーターは生憎最上階。急いでいるときに限ってタイミングが悪い。必死に階段を駆け上がる。いつもよりあたふたと鍵を探しだし、開けて、靴を脱ぎ捨てる。そしてリビングの時計をチェックした。
07:22
よし、思ったよりは早い。07:30に出れば間に合うのでなんとかいけそうだ。この際朝食は諦めよう。

とりあえず着替えて、鞄を用意しつつ歯磨き。そして顔を洗ったら出発。シュミレーションは完璧。寝癖のつきにくい髪質で良かった。最悪の結果は避けられそうだ。


しかし、不運魔王の毒牙に掛かった今、何事も無く事が進む訳がなかった。

鞄を用意するために入った書斎で待っていたものは、採点前の解答用紙の山、が薄く開いていた窓から入った風により、部屋中に撒き散らされた姿だった。

その後のことは言うまでもない。

遅刻は勿論、テストは採点もできていない上に二枚欠けていた。さらに学年主任は酒が苦手らしく、匂いに敏感で、(ほぼ)飲んでもいないのに無駄に怒らせてしまった、という訳だ。

現実逃避から抜け切れない、ややぼーっとした頭で行った漢文の授業中、俺は確信した。

5人が潰れた時点で、俺の携帯に入っている、奴らの失態が写されたありったけの写メを、それぞれの職場の人事部に送り付けたのは正確だったと。



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


ちなみに
文次郎→仕事に間に合う
仙蔵→時間の制約がない職業でセーフ
小平太→休み
伊作→遅番
留三郎→若干遅刻

なんて設定があったりなかったり。



惨劇=転じて、目を背けたくなるような、むごたらしい出来事。(広辞苑)


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