うららか日和



※現パロ
 滝ちゃんが♀



放課後、人もまばらな図書室で私はお決まりの席に着く。窓際のカウンター寄り、一番日の当たる場所。古いドアから響く扉の開閉音。部活が始まり騒がしいグラウンド。眠たくなる太陽の暖かさ。決して自習に適した場所ではないけれど、カウンターの中で静かに本を捲る中在家先輩の近くというだけで私にとっては誰にも譲れない特等席なのです。
ふと本から目を離し、こちらを見た先輩が軽く会釈をくれる。出来るだけ自然に返したつもりだったが、顔が赤くなってはいなかっただろうか。

窓の外を見ると、同じ委員会の七松先輩が大勢の部員を引き連れて恐ろしい勢いでランニングをしている。今ばかりは暴君なあの先輩に感謝しなくてはならない。学年も委員会も部活も違う、何の接点もない私と中在家先輩を知人までにはしてくれたのは他でもない七松先輩なのだから。


「…いつも熱心だな。」
「!」

テキストを開いて十数分。
不意に降り注いだ小さい声に慌てて顔を上げると、そこには憧れの中在家先輩。

「あ、ありがとうございます。」
「…古典、伊勢物語か。懐かしいな。…ここ、訳が少し違う。ここは……」

そして、簡潔且つ丁寧に教えてくださった。

「…分かったか?」
「はい、ありがとうございました。」

先輩には悪いが、全く理解出来なかった。いや、理解というか……集中できなかった。耳元で低音で囁くように喋られては、集中しようと思ったって出来るものではない。
うん、私は悪くない。
中在家先輩が優しくて、頭もよくて、大人っぽくて、色気があって、背が高くて、その上声まで渋くて格好いいのが悪い。


「…平、」
「あ、はい、なんでしょう。」
「…いきなりこんなことを聞くのはどうかと思うが、」
「はい。」
「……小平太が……好き…なのか?」
「……え?」
「…いつもわざわざ騒がしくて眩しい席に座るから、気になっていたんだが、」
「あの、」
「…考えてみれば、ここからはグラウンドがよく見える、」
「中在家先輩?」
「…平と小平太は、なんというか、仲が良いし、」
「中在家先輩!」
「……あ、すまない。…人前でする話ではなかったな。…俺が口出しすることでも…。」

違う。
違うのだが、なんと言えば良いのだ。
『私が見ていたのは貴方です。』とでも?
同級生もちらほらいる図書室で?
無理。いくら私といえど流石にそこまでの踏ん切りはつかない。

中在家先輩は無言になった私を見て、その反応を持論への肯定と捉えたのか、邪魔したな。と一言残し、納得したような、してないような、何とも言えない表情をして立ち去ろうとする。

「…好きだった。…だが、応援、してるから。」

耳に届いた微かな声を幻聴だとは思いたくなくて、夢のような言葉を現実に引き止めるかのように、先輩のブレザーを手繰り寄せた。

「…平?」
「本当…、です…か?」
「…ああ。…すまない。…迷惑なのは分かっていたが、どうしても伝えておきたかった。」
「……も。」
「…?」
「私もずっと……」



そして私もまた、うららかな陽が射し込むこの場所で、拙い言葉で愛を紡ぐ。



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緊張から饒舌になる長次、口数が減る滝ちゃんをイメージしてみた。
企画声の届く距離様提出
ありがとうございました\(^O^)/


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