間接キスのつづき

間接キスのつづき

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渡した竹筒の水を飲む小さな後輩は、子供らしく遠慮なく含んでいる。
これがい組の一年だったら、恐縮して潤す程度のひとくちで返されるだろう。いや、そもそもオリエンテーリングが始まって早々に水筒を空にする、なんて事はない筈だ。
ろ組は潔癖な面が強いから、自分の竹筒でしか飲まないかも知れない。

一応、所謂は間接的な接吻にあたるのだから。

雷蔵はんくんくと喉を鳴らす乱太郎を見下ろし、そんなことを考えた自分に首を振る。
ちょっと待って、うん、落ち着いて僕。こんなの別に同性同士で、しかも後輩に対して気にするものじゃないだろう?
接吻、だなんて。
自分と間接だなんて。


「不破先輩ありがとうございました!」

「どういたしまして。近くの川で水汲みながら行こうか」

「はい!」


ちゃぷちゃぷと少量になった竹筒を腰に下げ、乱太郎の小さな手を繋ぐ。
水で潤った子供らしいふくふくの唇が、やけに目についてしまってドキリとした。
しゃがんで目を合わせれば、きょとんとしながらも近くなった目線に、素直に嬉しそうに笑顔を見せる。
ああ、うん、可愛い。

「はれ?」

ごめんなさいすみません!
誰に謝れば良いんだ、土井先生か、山田先生か。やはり乱太郎のご両親にだろうか。
小さな唇を奪ってから、雷蔵は悩み癖を発症させた。
そこはまず接吻された本人に謝るべきだろう。
第三者が居たならそうツッコめたが、今は幸か不幸か二人しかいない。
呆然と口を開ける乱太郎、頭を抱え込んでしまった雷蔵。

見回りにきた教員が、首を傾げたのは言うまでもない。



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(2011/06/02)
 
 
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