君へのお礼

 『楽しみを紡ぐ日々』のラストより少し前

 キッチンの吊戸棚の中から、物を取ろうと桜が折り畳みのステップ台を広げる。その上に乗り、吊戸棚の中を見ようと背伸びをしたとき、ドカドカと大きな足音を立てて彼がキッチンへ飛び込んできた。

「何やってんだ」

 明らかに怒っている相澤の声音は、大抵の人間であれば怯むような威圧感がある。しかし彼女は臆することなく、平然としていた。

「雪乃の水筒がひび割れしてたので、新しいものを出そうかと」

 開いていた吊戸棚の中を見た彼は、普段丸めている背をしゃんと伸ばし、綺麗に整頓された棚の中から子ども用の水筒を取り出す。

「これか?」

「はい。ありがとうございます」

相澤から水筒を受け取った桜は、彼に見せるように高く水筒を持ち上げる。

「可愛いでしょう? これで500円なんですよ」

 パステルドットの可愛らしい水筒をお得に買えたのだと嬉しそうにしている彼女に、つい、随分安く買えたんだなと言ってしまいそうになるのを飲み込んだ相澤は、機嫌の悪い目を容赦なく向けた。

「踏み外したら、どうするつもりだ」

「個性で浮きます」

 間髪を入れずに答えた桜の言う通り個性を使えば問題はないのかもしれない。しかし、もしもを考えるからこそ、彼は納得しなかった。

「間に合わないってこともあるだろ」

「そうならないように雄英で3年間訓練したんですよ」

 ますますムスッと機嫌が悪くなってしまった相澤に、くすくすと小さく笑った桜は口元に手を添えたまま、上目でチラッと彼を見上げる。

「すみません。ちょっと意地悪を言ってしまいました。心配してくれてありがとうございます」

 妊娠を伝えたあの日から相澤の心配症は、彼女の腹が大きくなるのと比例するように強くなっている。
 大きな荷物、重いものは持つなに始まり、長時間の家事や一人で買い物に行くことも、つわりを起こすようになってからは良い顔をしなくなった。全部、自分の体とお腹の子を思ってのことだと理解しているが、たまには何も考えずに歩き回りたくなったりしたくなるものだ。困ったなぁと苦く笑う桜に、相澤は少しだけ気まずそうな顔をした。

「お前が心配し過ぎだって思ってんのも分かってる。でも……」

 子ども用の小さな水筒を持つ彼女の両手を、彼の無骨で大きな手が包むように触れる。

「……何か起きたときに、何もお前のことを知らないのは耐えられない」

ぐっと、強く握り締めてくる相澤の手に視線を落としてから、桜はそっと彼の顔を見た。

「消太さんの優しさはちゃんと分かってますよ」

 柔らかな声につられた彼の顔が上がる。その先で見たのは、穏やかな彼女の微笑みだった。

「心配しすぎって思うこともあります。でも、それも私や子どもたちのことを思ってでしょう?」

 だから不安にならなくて大丈夫ですよ、と桜の細められた優しい目が愛おし気に相澤へ向けられる。徐々に頬が熱くなってくるのを感じながら彼は彼女から目を背けた。しかし、その手は未だに桜の手から離れようとしない。

 そっと、桜は相澤の胸に額を押し付ける。甘えてくる彼女の背に彼の手が回る様子を、雪乃はリビングからこっそりと見ていて、ふふっと嬉しそうに頬を緩めていた。

***

 "赤ちゃんを産むのはとても大変なことだ"漠然と知っていたことよりも、もう少しだけ丁寧に教えてくれた相澤と約束したことを思い出している雪乃は、きゅっと両手を握った。

 リビングで編み物をしながらウトウトしている桜の肩に、お気に入りのタオルケットをかける。ここに初めて来たときに彼女からもらったタオルケットは大切に使ってきたものの、少しくたびれているが未だに雪乃の宝物だった。

「ん……」

 座椅子に腰かけたままの桜は背もたれに体を預けると深く眠り始める。平らだった彼女の腹は、今では少しぽっこりとしていた。

(赤ちゃん、早く会いたいな)

 桜の隣で寝転がった雪乃は、目の前のお腹を見つめてから何気なく顔を上げる。すぅすぅと静かな寝息を立てている彼女の顔はいつも通り整っていて美しいのに、最近青白く見えることがある。今も雪乃の目には桜の顔色がいいようには見えなかった。

(お姉ちゃん、昨日もご飯食べてない)

 自分や相澤の為に料理をしてくれているが、作っている最中、何度も口元を押さえているのを雪乃は知っている。大好きな彼女の役に立ちたい。掃除や洗濯は手伝えても、料理だけは、一人で火を使うのは危ないからと任せてもらえない。

『今は洗濯洗剤の匂いもつらいので、雪乃に手伝ってもらえて凄く助かってますよ』

 しょんぼりとする雪乃の頭を撫でながら桜は微笑んでいた。あのときの彼女の手を思い出しながら、自分の頭に触れていた雪乃もうつらうつらしてくる。

 もう少しで眠ってしまうというところで、雪乃は勢いよく顔を上げた。閃いた拍子に眠気などどこかへ行ってしまった。
 眠っている桜を起こさないように静かに起き上がるだけでドキドキしてしまうのは、思いついたことを実行しようとしているせいだろうか。立ち上がった雪乃は大きく動く心臓の上に手を置いて、自分を落ち着かせるために小さく息を吐く。そして、ゆっくりと実行に移し始めた。

***

 数日後。遊びに行っていた雪乃から、"今日はひーちゃんちにお泊りする"と電話がかかってきたのは夕方になる頃だった。

「え? でもいきなりは山田先輩にもご迷惑になりますから、また今度にしませんか?」

 何度か泊まったことのある山田や香山の家に預けることに心配はないが、突然はと説得しようとする彼女に電話の向こうの相手が代わる。

「No problem!! 心配スンナ!! なんの問題もねぇからよ!」

「山田先輩、でも、いきなりは……」

 納得しない桜に山田の声は一気に小さくなり、まるで内緒話をするように小さくなった。

「ホントにいいんだよ。……しばらく家空けてたら、アレが出やがって……」

「あ、ああ、そういうことですか……」

 震えている声で、山田の家に何が出たのかを大方察した彼女は苦く笑う。つまり、一人になりたくない彼は雪乃に一緒にいてほしいということらしい。

「分かりました。すみません、ご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします」

 通話を終える前に雪乃ともう一度代わってもらった桜は、いい子にして山田の言うことをきちんと聞くように念を押した。

 はい、と返事をした雪乃がスマホを山田へと返す。受け取った山田は大きな口をニィッと笑わせて雪乃を見下ろした。

「んじゃ、やっちまうか!?」

「うんっ!!」

 イエーイ!とハイタッチをすると、雪乃は嬉しさのあまり山田へ抱き着く。

「ひーちゃん、ありがとう。雪乃のワガママ聞いてくれて」

「気にスンナ。お前の気持ちはアイツらより今は俺のが分かってんだ。協力しねぇわけねぇだろォ?」

ぽんぽん、とあやすように小さな背中をたたいている山田から体を離すと雪乃はにっこりと笑って見せた。

「ひーちゃん、頑張ろうね」

「Yes!! 任せとけ!!」

 もう一度ハイタッチをした二人は、買い物に出るために玄関へ向かった。

***

 通い慣れたスーパーと同じように、買い物かごをカートに乗せる。まだ体の小さい雪乃には重くなった買い物かごは持てない。それが理解できているから当たり前のようにしたことだった。

「今日は俺が持ってやるから、こいつはいらねーな」

 ひょい、とカートから買い物かごを持ち上げた山田は、ニッと大きく口元を笑わせる。

「ありがとう、ひーちゃん」

目を瞬いていた雪乃は、彼が言外に持たなくていいと言ってくれていることに気づき、嬉しそうに笑った。

「んじゃ、早速始めようぜ! 何から行くよ?」

「お砂糖と、お塩と、お醤油とお味噌。あのね、重くて冷たくないものから買えば、上に軽いもの入れて買うの楽なんだよ」

 普段、桜と買い物をして覚えたことを楽しそうに説明する雪乃に山田の顔に浮かんでいた笑みが引きつって固まる。

「……やっぱ、カート使わね?」

 小首を傾げた雪乃は、山田が困惑していることに気づかず繋いでいる手を引いた。

「ひーちゃん、行こ? お砂糖買わなきゃ」

「……男は見栄張ってなんぼだよな」

「みえ?」

 よく分からない言葉に、また首を傾げた雪乃へ山田は腹を括る。こうなればどんなに重くなろうと意地でも持ってやろうと意気込んでいた。

 しかし、彼は忘れていた。スーパー内で頑張って重い買い物かごを持ったところで終わらないことを。帰りに、同じ重さの買い物袋を持たなければならないということは会計が終わるまですっかり頭にはなかった。

***

「ひーちゃん、大丈夫?」

「な、なんてことねぇんだけどよォ。……メンタル的にはクタクタだわ」

 近くのスーパーだからと歩いて行ったことも、思ったよりも荷物が重くなったことも現役ヒーローである山田にとって疲れることではなかったが、彼のメンタルを著しく疲れさせたのは、雪乃を見て声をかけてきた人々だった。

「どいつもこいつも、俺のこと"お父さん"って呼びやがって……。んなに老けて見えんのかよ……」

 まだ二十代だっつーんだよ、とブツブツ言いながら俯いている山田の手を雪乃の小さな手が引く。

「ひーちゃん、帰ってきたら手洗いうがいしなきゃ。お姉ちゃんに風邪移しちゃ大変だから」

 相澤に教えてもらうまで知らなかったことを、山田も知らない前提で話す小さな女の子が可愛らしくて、彼は仕方がないとばかりに口元を笑わせた。

「……そうだな。んじゃ、手ェ洗おうぜ!」

 うん、と笑った雪乃と手を洗う。少し前はステップが必要だった洗面台も背伸びをせず、手が洗えている。真面目に爪の間までしっかりと手を洗う雪乃のつむじを見る山田の目は柔らかく細められていた。

***

 翌日。早朝に山田に送られて帰ってきた雪乃を見た桜は目を瞬かせていた。

「早かった……です、ね?」

いつも帰る日の夕方まで山田に遊んでもらう雪乃の早すぎる帰宅。意外に思っている彼女とは違い、いきなり送ってきた山田に相澤はイラっとした顔をしている。

「お前、帰すなら時間考えろ」

「考えてるっつーの。むしろベストタイミング!!」

 グッと親指を立てる山田に、先ほどやっと寝られた桜を起こしたことなど知る由はない。イライラとしている彼を、まあまあと宥めながら桜は雪乃へ両腕を広げた。

「おかえりなさい、雪乃」

「うん、ただいま!」

 抱き着いてきた雪乃を抱きしめ返した彼女は、ふと、増えた荷物に目を向ける。

「こんなに何か持って行ってたんですか?」

「ううん、あのね」

 持ち帰ったトートバッグに入れようとした雪乃の手が止まり、慌てて桜から離れた。

「ま、待ってて! 雪乃、すぐ手洗ってくる!!」

慌てて洗面所へ入って行った雪乃は、すぐに戻って来てトートバッグから渡したくて仕方がなかったものを両手で桜へ差し出す。

「コレ、お姉ちゃんに……」

 どことなく緊張した面持ちの雪乃が差し出すスープジャーを受け取った。

「コレは?」

「ひーちゃんちで作ったの……。だから、昨日お泊りさせてもらったんだ」

 蓋を開けたスープジャーからは湯気が立ち上る。ふわり、と温かさと共にこのスープの優しい匂いが桜の鼻腔に届けられた。

「気持ち悪く、ない……?」

 強い心配と、僅かな不安を混ぜた目を向けられた彼女は、やっと雪乃の真意を悟る。

「ええ、とても美味しそうです」

 "ありがとうございます"と微笑まれた雪乃の顔は、まるで一面の花が咲いたように明るくなっていく。
 つわりで食事がまともに摂れなくなってしまった彼女を心配していた雪乃が、どうしても桜の為に料理をしたくて山田に協力してもらったのだと分かった相澤が拗ねたように目を逸らした。それに、くすっと笑った彼女は山田へ向き直る。

「山田先輩もありがとうございます。雪乃に付き合っていただいて」

「You’re welcome!! これくらいお安い御用だ!!」

「お前、今何時だと思ってんだ」

 早朝のマンションで大きな声を出した山田を相澤が睨みつける。ヤバイとばかりに自分の口を押えた彼に、雪乃はトートバッグから出した包みを差し出した。

「これは、ひーちゃんの」

「ん? 俺にも作ってくれたのか?」

「お前、雪乃のことちゃんと見てなかったのか?」

 怒気を含んだ相澤の声に、ハッとした山田は慌てて首を振る。

「んなワケねェだろ!? ちゃんと作業するとこは見てたって!!」

疑わしいとばかりの視線を送ってくる相澤に、山田は桜へと目を向けた。

「それにしても、雪乃のやつスゲェな! 俺なんかより全然料理できんだな!」

 え?と見開かれた彼女の目が雪乃を映す。もじもじと照れくさそうな雪乃の口は小さくしか開かれず、声もそれに見合った大きさしか出なかった。

「お姉ちゃんが作ってくれてるの、毎日見てるから……」

 簡単なものであれば一緒に作ったことはあるし、いつもキッチンを覗いているのにも彼女は気づいていた。目の前の照れくさそうにしている雪乃を見て、細められた桜の目は感慨深さとほんの少しの寂しさが混ぜられている。

「いつまでも小さな子じゃないんですね」

 何を言われているのかイマイチ分かっていない雪乃は、撫でてくれる彼女の手から伝わる優しさをただ受け入れていた。

***

 午後から仕事だからと山田はリビングに上がることはなく帰っていった。玄関で見送った山田は、雪乃からもらった弁当を抱えて嬉しそうにしていた。

「お姉ちゃん、どう……?」

 ドキドキとしながら桜の隣に座る雪乃は胸の前で両手を握り締めている。何度も山田に味見をしてもらって美味しいと言ってもらえた。それは凄く嬉しいことだけれど、彼女が食べられるものでなければ雪乃にとって意味はない。

「美味しいです。それに凄く食べやすいです」

 目を丸くさせている桜は思わず、自分の口を指先で押さえていた。コンソメベースのとてもシンプルな野菜のスープだけれど、濃すぎずやさしい味付けに胸の中までもがぽかぽかとしてくる。

 ほっ、とした勢い余って脱力した雪乃はヘナヘナと桜の膝に顔を埋めた。長く吐き出された息が、雪乃がどれほど心配していたのか、桜にも相澤にもよく伝わった。

「ありがとうございます。雪乃」

 うん、と頷いたものの、雪乃は自分の顔が熱くなっているのを感じて、顔を上げられなかった。一生懸命に作った料理を喜んでもらえるのが嬉しいことは知っていた。でも、最初から最後まで一人で頑張った料理は初めてで、それを喜んでもらえたことに胸の奥で何かが震えている。
 息すら震えてしまいそうな喜びを、雪乃が料理に見つけた瞬間はこのときだった。

***

 じゅーっと卵の焼ける音がまだ耳の中に残っている。帰宅した山田は、もらったばかりの弁当の包みを開いていた。

「こんなん手伝いなくても作れるようになるなんて、デカくなったんだなァ」

 相澤たちの元へに引き取られたばかりの頃は、何をするにもビクビクとしていて、自信のない子だった。小学校に上がる頃には山田にも、あれがしたい、これがしたいと話せるようになった雪乃の頼みは、いつだって、あの二人を喜ばせたい気持ちからだ。

 優しい子に育っているのが外から見ていても分かる。相澤と桜からしっかりと愛情を注がれている証拠なのだろう。

 あれこれ調理していた雪乃の様子を思い出しながら、詰められたおかずの一つ一つを見ていく。
 梅紫蘇のおにぎり、サワラの有馬煮、きぬかつぎに野菜の煮物、きっと相澤に作っていた弁当と同じ内容なのだろうと分かりながらも山田は柔らかい笑みを浮かべていた。

 ふと、弁当箱の下から出てきた小さなメモに気が付く。引っ張り出したそれは、いつだか雪乃がお気に入りだと見せてくれた猫のイラストが印刷されたメモ帳。中を見ていれば丁寧な子どもの字が、いかにも小学生の女の子が好みそうなキラキラのペンで綴られていた。

『ひーちゃんへ
いつも雪乃のわがまま聞いてくれてありがとう。
ひーちゃんのこと、すきだよ。
雪乃』

 天を仰ぐように目を押さえる山田は、あーっと声を漏らしている。

「こんなモン、よこされたらなんだって聞いちまうだろーが……」

 雪乃のワガママなんて、一つもワガママにはなっていない。まったく、と何気なく、目を左下に動かしたとき、リビングのダストボックスの隣に何かが落ちているのを見つけた。

「ンー?」

 偶然、見えたそれが何となく気になってしまい、山田は落ちていた紙くずを手に取った。拾ったメモ用紙は、雪乃が山田に宛てた手紙と同じもので、なんとなく嫌な予感がした。
 予想通り、メモ用紙には"しょうちゃんへ"と書かれていた。文字が大きすぎて名前が入らず、捨てられていたメモ用紙を見るんじゃなかったと山田は一人うな垂れた。

***

 綺麗に書けている雪乃からの手紙を昼に見つけて読んだ相澤は、フッと優しい表情をしていた。

『しょうちゃんへ
いつもやさしくしてくれてありがとう。
大すきだよ。
雪乃』

 よく晴れた空を見上げて、思った以上に子どもの成長が早いということを実感する。文字もろくに読めなかった雪乃が最初に自分のフルネームを書いたときだって、とても感慨深かったというのに、この弁当はそれも一入だ。瞬きをしたり、ぼうっとしていれば見逃してしまいそうなほど、雪乃の成長は早いように思えた。

 しっかり見ていなければと思った彼は、頑張った雪乃へのお礼も込めて、甘いものでも買って帰ろうと相澤は目を伏せる。桜が食べられるかどうかは分からないので、メッセージを送ろうとスマホを手に取ったタイミングで通知が来た。

『雪乃からお手紙もらいましたか?』

 もちろん相手は桜からで、一緒に送られてきた写真には彼女が雪乃からもらった手紙が添えられている。
 スープジャーの底に隠すように貼られていたメモ用紙は相澤がもらったものと同じ。内容は違えど、"大すき"のところは共通していた。

『大変でなければ、帰りに甘いお菓子を買ってきてほしいです』

 続けて送られてきたメッセージに桜と考えることは同じだなと、照れを隠すようにため息を溢す。
 返事を送ってから弁当を食べ始めた相澤は、午後の仕事に向けて気持ちを切り替え始めるのだった。
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