04 プロローグは唐突に
「好きです、付き合って下さい」
嬉しかった。友達以外に可愛いと言われたことのないわたしには、初めての告白されるという行為なわけで、それはもう純粋に嬉しかった。まあ友達もきっとお世辞なんだろうけどさ。
だけどわたし的には初めての彼氏はやっぱり大好きなひとがいい。何回か見たくらいの人だったし、それに告白なんてしたことがないわたしだけど、いい加減な気持ちでオーケーされたら、傷付くと思う。
だからこそはっきりとごめんなさい、って言ったのに、彼――えーと、花岡くん?(わかんないや)は眉を潜めてわたしを睨み付けた。
「っ、なんでだよ!俺がせっかく告白してやってんのに、まじありえねー」
「え、花岡、くん?」
「……は?誰だよそれ」
やってしまった。どうやら違ったみたいだ。口調も最初と全然違うよ。身長差があるからかわたしを上から見下しながらずんずん近づいてくる彼がすごくこわい、こわ、い。
「や、だ。来ないで、」
「あ?うっせーよブス。なあ、俺が遊んでやるっていってんだよ」
「ひ、」
「岡田、そのくらいにしといたら?」
教室だったせいかすぐに壁に詰め寄られていよいよ視界がぐにゃりと歪みはじめたとき、教室の扉が開く音がして、それと同時に凛とした中性的な声が聞こえた。ゆらりとそちらへ顔を向けると友達がなにか今日プレゼントを渡していた…えーと、ゆ、雪山くん?がいて。
「ちっ、なんだよ、お前には関係ないだろ」
「んー、ないけど、こういうときって助けるのが普通でしょ?お前声でかいから廊下までまる聞こえ。」
すると岡田くん(っていうらしい)はわたしにちらりと目をやってそのまま鞄をもって出ていってしまった。…ああ、こわかった。ばくばくと脈打つ心臓を落ち着かせるように胸に手をあててその場にしゃがみこんでしまった。
「大丈夫?あいつ馬鹿だから近づかない方がいいよ。」
「あ、えと、」
「こわかったでしょ、」
じわり、頭を撫でられると同時に一度収まったはずの水分が瞳を潤した。
「ごめ、今日、えっと、雪山くん、おめでたい日なんでしょ?」
「……まあ、そうだね。」
「そんな日に、なんか、変なの見せちゃって、ごめんね、」
「なんで謝るの。別に君は悪くないでしょ?ほら、これで涙拭いて、」
「…ん、でもっ」
「俺さ、」
わたしの声に被らせるように発せられた声。思わず肩に力が入ったわたしを見て彼は微笑を浮かべた。
「俺、」
「うん」
「今日誕生日なんだ」
「、!……おめでとう…?」
「ふふ、ありがとう。ちなみに名前は幸村ね。」
「え、…ご、ごめんなさ、!」
「別に怒ってないよ、雪山ってすごいセンスしてると思うし。」
「………すみません」
「うん、だからさ、…んー、そうだなあ」
「………」
「まずは友達になろうか。」
「……え?」
「俺に謝罪したってことは何か悪いことをしたって思ってるんでしょ?俺は特に気にしてないけどさ。だから、」
「君のこと、教えて?」
気付いたら頷いてしまっていたわたしはこの人に何かしらの感情をすでに抱いていたのかもしれません。