01 世界の終わりと君と夕焼け



もしも明日、世界が終わるとしたら貴方は何をして過ごしますか?





最近私の学校では、世界が滅びるなんていう誰だかの予言の話題が流行っていた。

私は微塵も興味ないけれど。
だって、そんな予言もう何回も聞いてるんだもの。


そんなことを考えながら私は幼馴染みの精市の隣を歩いていた。
今日は偶々部活がなくて一緒に帰ろうよ、と誘われたのだ。



「名前、何か考え事かい?」

『うん、世界の終わりの予言あったでしょ?』

「あぁ、あれね」



世界の終わり、私は何をして過ごすだろうか?
もしかしたら気づかないうちに世界が滅びて死んでしまっているかもしれない。
その前に事故や年老いて死んでしまっているかもしれない。

もしも明日世界が滅びると分かっているのならば、私の願いは決まっていた。



『精市は、もしも明日世界が滅びるとしたら何がしたい?』

「俺は…やっぱりテニスがしたい、かな」

『精市らしいね』



うん、予想通り。
きっと精市ならテニスがしたいって言うと思ってた。だってテニスバカだし。

そう、分かってた。
私なんか精市の中ではとても小さな存在だって。
私は所詮ただの幼馴染みでしかない。

でも私にとっての彼の存在は…



「名前は?」

『私は、』



私は…
私の願いはただひとつ、精市と2人で過ごしたい。
とてつもなく贅沢すぎる願い。

世界の終わりに彼と一緒にいれるのなら、私は未練もなく死ねるだろう。
だって私は…


―――――精市のことが好きだから。


でも、そんなこと言ったら精市が困ってしまうから言えない。
ずっと胸の中にしまっておかなければならない私の想い。


私が沈黙してしまって少し困ったような、悲しいような顔をした精市が言った。



「俺には言えない?」

『そんなことをない、けど…』

「けど?」

『精市が困るから』

「そんなわけないだろ」



お前に何言われたって俺は困らないよ、そう言ってふわりと笑った。

そんな優しい精市が私は大好きで、だからこそいつまでも一緒にいたいと思うんだ。



『あのね、』

「うん」

『私は…精市と2人で過ごせたらいいなぁ、って思ったの』

「っ!…そう、なんだ」



精市は少し驚いて何か考えていた。
やっぱり困るよね、ただの幼馴染みにそんなこと言われたら。告白じゃないけど、きっと鋭い彼は私の気持ちに気付いている。



「ねぇ、名前……お前は俺のこと好き?」

『え、うん…好きだよ』

「それはどっちの意味でだい?」



私は解答に困ってしまった。

言えるなら言いたいよ…
仲のいい幼馴染みとしてではなく、恋愛的な意味で精市が好きだって。ずっと昔から精市しか見えてないって。
でも言ってしまったら、もう側には居れないかもしれないから…



「俺はね、名前のこと恋愛的な意味で好きだよ…ずっと前から」

『えっ?』



う、そ…
精市が私のことを好き?

夢じゃないかな?夢なら覚めないでいてほしい。
ホントに、ホントにホント?



「夢じゃないさ…夢なら人の温かさは感じないだろ?」

『っ!せ、いち…』



私は彼に抱きしめられた。

突然すぎて頭がついていかない。何も考えられなくなる。

彼は私にもう一度同じ質問をした。



「名前は、俺のこと好き?」

『好き…ずっと、ずっと前から大好きだった。でも…言えなかった』

「俺も同じだよ。もし告白が失敗して、気まずくなって…名前が離れていってしまうのが怖かった」

『精市…』



精市も私と同じだった。
嬉しくて嬉しくて、これ以上の贅沢なんてないと思う。
精市が私のことを好きだと言ってくれた。それだけで私は幸せだ。

精市の温もりが伝わる。
温かくて安心する。

心臓の鼓動が伝わる。
うるさいくらいにドキドキしている。

照れた頬がピンクに染まる。
夕焼けで更に赤く染まる。


―――――幸せすぎて泣きそうだ。



「これからも、ずっと俺の側にいて。離れちゃダメだから」

『うん、ずっと側にいる…』



夕焼けが広がる空の下、私達の想いは繋がった―――――



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -