───……
「土方さん、最近あたしの事避けてやせん?」
「…べ、別に避けてねーけど」
あれから俺は、沖田とどう接していいか分からなくなった。
どうだヘタレだろ、笑うがいいさ。
「…土方さんはあたしの事が嫌いになったんですかィ?」
「んな訳ねぇだろ!!」
「じゃあなんで、」
好きだ、なんて言える訳ねぇだろ。
そんな事を思ってたら、まただ、またあいつが沖田を呼んだ。
「沖田さーん」
山崎の方へ少し悲しそうな顔をしながら行こうとした沖田の腕を思わず掴んでしまった。
驚いた顔をしてこっちを向く沖田。
こうなっちまったのなら仕方ねぇ。
「行くなよ」
「…へ?」
「だから行くなって言ってんだよ」
いきなりの事で驚いたのか、俺をじっと見てくる。
「…何言ってんですかィ」
「本当だよな、」
苦笑いをする俺を沖田はやっぱり見つめてきた。
「最近、土方さん変でさァ」
「…そうなのかもな、」
「やっぱりなんかあったんですかィ?」
「……」
「なんで黙り込むんでィ、あたしそんなに信用ないですかィ?」
そういって俯く沖田を見てぎょっとした。
一瞬だけだけど、沖田が泣いてるように見えたから。
「泣いてんのか?」
「泣いてねーよ、それより腕離して下せェ、山崎が呼んでるから行かなきゃ」
「沖田が泣いてんのにほっとけるかよ」
こんなの、山崎と沖田を一緒に居させないための口実。
「あんたはずるい、あたしがどんな思いでいるかなんて全然分かってない」
がばっと顔を上げた沖田はやっぱり泣いていて、
こちらの言いようのない雰囲気に何かを察したのか山崎がこっちに来ようとしたが沖田の来るな、と言う制止の声で山崎はその場で立ち止まる事しか出来なかった。
「山崎もうお前帰れ…」
「沖田さん…、なんで、」
「もう山崎に頼る訳にはいかないんでさァ、あたしもう我慢出来ない、この場で土方に全部気持ちを伝えるから…」
小さく山崎に、ゴメンなと言う沖田に意味が分からなかった。
山崎は小さく返事をしてゆっくり、俺らとは逆方向に足を進ませた。
一体こいつらの関係はなんなんだ?そんな俺の思いを察したのか、沖田はゆっくり口を開いた。
「あたし、山崎に告白されたんです」
どきりとした。
そして鼓動が早くなった。
「あたし、その告白断りやした」
その言葉を聞いて安心した俺は心底最低な奴なんだ。
「じゃあせめて相談くらいはのらせてよ、って山崎が言ってきたのでずっと相談してやした」
この先を言うのが怖いのか、沖田は口ごもった。
それと同時に沖田の腕を掴んでた手がカタカタと震えてきた。
俺はもちろん震えてなんかない、震えてるのは沖田の方だ。
「そんなに言いたくないなら、言わなくてもいい」
「駄目なんです、言わなきゃ」
ぽろぽろと沖田の瞳からは涙が溢れてきた。
それを指で拭ってやると沖田はびくりと身体を震わせた。
「す、すいやせん」
「気にすんな、それに俺もお前に言わなきゃいけない事がある」
不思議そうにこっちを見る沖田に、なんだか俺も震えてきた。
「土方さん、なんか震えてますけど」
「き、気にすんな!!」
深く深呼吸をして、俺は口を開いた。
「俺、沖田がすきだ」
今度は驚いた顔をした沖田。
そりゃ、いきなり告白したらそうなるわな。
「山崎とお前が一緒に居るのなんかもう見たくねぇんだよ…、」
ついに言っちまった…。
そして黙り込む沖田を見て後から後悔した。何言ってんだ俺は。
でも言わなきゃ、沖田が山崎の元へ行っちまいそうで、
「馬鹿じゃねーの」
「…すまん」
「なんなんだよチクショー、あたしより先に言いやがったな土方コノヤロー」
「へ?」
思わずマヌケな声をだしちまって少し赤面する。
「あたしだってあんたが好きでさァ!」
なんなんだよ、
(こんなに馬鹿みたいに震えたのによ!
「なんであんたもっと早く言わないんですか!このヘタレ!」
「うるせーよ!好きだって気づいたの最近なんだよ!」)
2010/08.02
ただ山崎が可哀相な話になってしまった。
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