「副長、俺沖田さんの事が好きです」
「は?」
「だからもらっていいですか?」
山崎からこんな宣言を受けてからもう三日たった。
何で俺に聞くんだよ、別にお前の勝手だろ、なんて答えたのに俺の、頭の中はモヤモヤするばかり。
くそ、なんだっていうんだよ。
「……たさん」
別に俺は沖田なんか好きじゃねぇのに。
だいたい山崎のヤローはあんな女らしくねぇ、沖田のどこがいいんだよ。
「土方さん!!」
「うわっ!」
「あんた、人の話ちゃんと聞いてやすかい?」
わりぃ、なんだっけ?
そう俺が言うと沖田は、俺をおもいっきり蹴りあげた。
(沖田なんかほら、こんなに狂暴だし、可愛くねーし、山崎のタイプどうかしてんじゃねぇの?)
「ったく、最近あんたぼーっとしすぎでさァ!何かあったんですかィ?」
「おまえの、……いやなんでもない」
お前の事だよ!と言いそうになったのを慌てて堪える。
いや、だってこいつ山崎が自分の事を好いてる事しらねぇし。
別に言う必要もねぇ、と思ったから。
…それよりなんなんだよ、この胸のモヤモヤは。
「土方さん、あんたがあたしに隠し事をするなんて十年は「沖田さーん!」
きっと沖田は十年はやいと言いたかったんだと思う。
なのに、誰かに言葉を遮られた。
もちろん声の主は、
「んだよ山崎、あたしに何か用かィ?」
山崎だった。
まただ、また胸がモヤモヤしてきた。
なんなんだよこの感情。
「いや、ちょっと沖田さんと話がしたくて」
「ははーん、山崎まさかこのあたしに惚れたのかィ?あーあー、モテる女は辛いでさァ!」
「あはは、沖田さんたら!それじゃ土方さん沖田さんお借りしますね」
そういってにこりと笑って沖田を連れてく山崎に、酷くいらついた。
そして何故か悔しくなった。
意味わかんねぇ、本当になんなんだよ。
やりきれない気持ちをぶつけるかのように、俺は壁を殴りつけた。
────…
それからだ、それから俺が沖田と一緒に居ると山崎が沖田を掻っ攫っていく。
その度に苛立ちと、悔しさが同時に俺を襲ってくる。
最近なんか山崎と沖田が一緒に居るだけでイライラするようになってきた。
なんなんだよ、この気持ちは。
「それ恋だよ、こ、い!」
「はぁ?」
呑気にそういう銀八に、いらついた。
(こっちは真剣なのに、こいつはふざけやがって…)
「てゆーかさ、なーんで俺がお前と恋ばなとやらをしなくちゃいけないわけ?」
「ふざけんな!俺だってこんな事なければお前なんかに頼らなかったのによ!だいたい、恋だぁ?ふざけやがって!真剣に俺は悩んでるのに、なめてんのかテメェ!!」
一息で、あんな長い言葉いえばさすがに息は乱れる。
ぜぇぜぇ、と乱れる呼吸を落ち着かせながら、銀八を睨みつけると、銀八はやはり呑気に一言言い放った。
「多串君も鈍感なんだね」
「だからテメェは…っ!!」
ついに、銀八への怒りが限界を超えた俺は殴ってやろうと手をあげた瞬間、さすがに危機感を感じたのか、銀八は慌てた様子で口を開いた。
「ちょっと待って!!あのさ、沖田と山崎が一緒に居るのを見たらなんかこの辺がモヤモヤしねぇか?」
そう言って銀八は自分の胸の辺りを指差した。
何故分かったんだこいつは、エスパーかなんかか?
ただ黙って呆然とする俺を見て銀八はニヤリと笑って一言。
「図星なんだ?」
その言葉を聞いた瞬間、身体中の熱が顔に集まってくる感じがした。
俺が沖田を好きだと、悔しいが銀八によって確信した瞬間だった。
そのあと、まだニヤニヤしながら、まぁいつも一緒に居たら気づかなくても仕方ないのかもな、と言う銀八をおもいっきり叩いたのは言うまでもない。
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