午前1時、外は当たり前だけど真っ暗。
土方さんに、書類を大量に渡されて明日までに提出しろと言われた。
それが今やっと終わったのだ。
(普段サボってる罰だとよ)
明日も仕事だってのに、死ね土方。



「よっこらしょ」



おばさんくせぇ事を言いながら立ち上がり、首をポキポキと鳴らす。
とりあえずさっさと寝間着に着替えて、明日に備えてもう寝よう、なんて思いながら押し入れを探り、寝間着を取り出して服を脱ぐ、いや、脱ごうとする。
(視線を感じる…)

そういえば、空気の入れ替えだなんて思って、自室の窓を少し開けたのを思い出した。横目でチラリと窓の方をみたら、案の定知らねぇおっさんが息を荒くして見ていた。
ここを真選組の屯所と分かっててこんな事をするのは、度胸があるね、なんて思いながらおじさんに怪しまれないように、服を脱ぐ。
そして寝間着を取るふりをして、近くに落ちていた土方暗殺グッズの一つである、蝋燭をその変態親父に向かって全力で投げ付けた。
蝋燭は変態親父の顔に見事に当たった。



「よっしゃ!」


小さくガッツポーズをするあたし。
結構な力で投げたから、蝋燭は親父の顔に当たって割れて、そして親父はドサリと倒れた。
急いで寝間着に着替えて、外に居る変態親父を取り押さえようとしたら、自室のドアが勢いよく開いた。



「沖田どうした?さっきなんかすごい音した………」



そう言いかけた土方は慌ててあたしから視線をそらした。
そして小さくすまん、と謝った。
何で謝ってんだこいつ、気持ち悪ィなんて思ってたら、そういえばまだ親父が外に居るんだったと思い出す。



「そういや、あたしが着替えてるとこ外に居る親父に覗かれたんですが」

「なっ…!」

「いや、大丈夫でさァ、今は気絶してるんで、早く逮捕しちゃいやしょう」



やっぱりあたしに視線を向けない土方にちょっと苛立ちを覚える。



「…あんた何でこっち見ないんですかィ?」

「いや…、その…、とりあえず服を着てくれ…」



あ、忘れてた。
手に持っていた寝間着に着替えて、土方さんと一緒に変態のもとへ向かった。



「土方さんって意外にウブなんですねィ」

「は?」

「たかがあたしの下着姿見たくらいで顔を赤くして、そーゆーの見慣れてるんじゃないんですかィ?」

「…うるせーよ」


否定をしない土方さんに、チクリと心が痛んだ。
まぁ、ね。
だって真選組一の色男だもんね。
…あたしに振り向いてくれる訳ないよね。



―――……



「おきろー、変態ジジイ」



ベチベチと気絶してる親父の頬を叩いてると、土方に無理矢理引き剥がされた。



「ちょ、なにするんでィ!」

「お前こいつに覗かれたんだろ?襲われたらどうすんだ!」

「あたしは一応1番隊の隊長ですぜ?なめてもらっちゃ困りまさァ!それに、」

「それに…?」

「何かあったら土方さんが居るんで大丈夫でィ」



言ってから恥ずかしくて、思わず下を向いてしまった。



「…そ、そうだな」

「へい」



そうだな、なんて言われたら余計恥ずかしくなってきた。
やり場のない気持ちをぶつけるかのように、いつまでも気絶してる変態親父を蹴りあげた。
(気絶させたのはあたしなんですがねィ)
親父はゆっくり目を開けて、少し辺りを見回してから、あたしをじっと見る。
(え、なに?)



「あ、沖田さんじゃないか!酷いな〜、おじさんに蝋燭ぶつけるなんて!でもそれは照れ隠しなんだよね?」

「なに言ってんだ、あんた」

「だ、誰だお前!僕と沖田さんの愛を邪魔する奴か!」

「…知り合いか?」

「いいえ、全然見覚えありやせん」

「それにしても沖田さんの肌綺麗だったね、そろそろ触らせてくれてもいいんじゃないかな?」



そう言って親父はゆっくり起き上がり、あたしを抱き締めようとしてきた。
(気持ち悪ィ)
おもいっきり蹴飛ばしてやろうと構えたら、あたしより先に土方さんが親父を殴った。



「こいつは俺の女だ!だから、こいつに手出ししていいのは俺だけだ!」

き見
(あの変態ジジイは取っ捕まえて、調べてみたらどうやらあたしのストーカーだったらしい。
とんだ傍迷惑なやつだ。
でも、

「あの覗き魔が居なけりゃあたしらはくっつかなかったんですよねィ」
「だな」)



2010/05.17








 
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