大好きだった。
でも素直になれなくて。
好き、だなんて伝えたら全てが終わる気がしたんだ。
だからずっと押し殺してたこの気持ち。
もし、あたしがあいつに好きって伝えていたら、未来は変わってたの?
「俺、彼女が出来た」
そう言って照れ笑いする土方に、あたしの思考回路はぴたりと止まった。
聞き間違いだったらどんなにいいことか。
でも、恥ずかしそうに頬を少し染める土方に、現実をどしりと突きつけられた。
「お、おめでとうございやす」
「あぁ、ありがとな…、」
これが精一杯だった。
涙が溢れそうになった。
もう土方はあたしに振り向く事なんてないんだ、あたしがどんなに頑張っても一途な土方には…。
こいつを本当に殺せば、あたしのものになるのか、とも考えてしまった。
「…大事にしてあげて、な」
「あたりめェだろ」
普段のあたしは素直になれなくて、いっつも喧嘩友達という関係をキープしてた。
それだけで、土方の隣に居れたから。
一緒に笑えたから。
でも、もうあたしは土方の隣に居れないんだ。
土方の隣は彼女の特等席。
バイバイ、ありがとう。
大好きだったよ、…ずっと大好きだよ。
「じゃあね、」
「え?沖田どこ行くんだよ」
「どうせ彼女さんと一緒に帰るんでしょ?待たせちゃ悪いでさァ」
そう言って、ひらひらと手をふりながら邪魔者は退散。
…とか言ってそれはもちろん口実。
このままじゃ、涙が溢れてしまいそうだから。
それと、彼女と一緒に笑い合う土方なんかを見たくなかったから。
結局あたしは逃げてるだけなんだ。
ちょっと歩いたところで、涙が溢れてきた。
とめどなく溢れる涙をどう止めようか、考えていたらいきなり肩を掴まれた。
驚いて、振り返ってみたら大好きなあの人の顔。
(あ、やべ…、涙拭うの忘れてた)
慌ててゴシゴシと涙を拭う。
…泣いてんのバレたか?
そう思って土方を見ると、いきなり抱き締められた。
理解が出来ない。
「…なんで泣いてんだよ…っ」
「ちょ、土方さん?あんた気でも狂ったんですかィ?彼女持ちの奴がんな事していいのかよ、早速フラれちゃいやすぜ」
優しくすんなよ。
だったら冷たく引き離してもらったほうがマシだよ。
これじゃあ諦めがつかねーじゃねぇか。
「あたし、あんたのそういうところ、嫌いでさァ」
「いいよ、嫌いでも」
「離せ…っ、ボケ」
蹴っても殴っても離れようとしない土方。
「うぐっ…、離せよっ…」
「泣いてる奴を離せるかよ…」
ボロボロ流れる涙を土方が拭う。
その手を振り払うあたし。
「ふざけんなよ…っ、あたしがどんな気持ちでいるかも知らないで…」
「ごめん、ごめんな」
謝るくらいならさ、
(あたしの事好きになってよ)
2010/05.12
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