いつもより30分早めに家を出た僕。
理由はNに町を案内するからだ。
朝は苦手なのに、何故か僕の足どりは軽かった。
理由なんてとっくのとうに気付いてるのに気づかないふりをする。
いつも起こしに行ってるトウヤに、先に行くからというメールを入れて、僕はNと待ち合わせの場所に向かった。
正直絶対トウヤは遅刻するなって思ってたのに僕はNを選んだんだ。


───……


「おはよう」

「…おはよう」


町を案内してくれと言ったのはNなのに、眠たそうに欠伸をしながら話す。
そんな姿も可愛いな、と思ってしまった。
「Nは何処か知りたい場所とかある?」

「僕、本を読むのが好きなんだよね」

「あ、僕もだよ」

「本当かい!?」


同じ趣味だったのが嬉しいのか僕の手を取り目をキラキラと輝かせる。
Nと取り合ってる手から、熱がどんどんと顔につたっていく。
(まずいっ…)


「……っ」

「チェレン君?なんか顔が赤く「じゃあ図書館に行こうか!!」


Nの言葉を遮るかのように僕は話した。
そして顔が赤くなってるのをばれないようにどんどんと先に進んでいく。
後ろから待ってよー、なんて声が聞こえたけど振り返る余裕なんて僕にはなかったんだ。


「閉まってるね」


時間が時間だからね、と僕が言うとNは目に見えてわかるようにがっかりしていた。
僕らが図書館に行ってみたはいいものの、やっぱり朝早いとやっていなかった。
はぁー、とため息を零すN。


「そんなに楽しみだった?」

「…僕ね、友達と図書館なんて行くの初めてだったからさ、すごくワクワクしてたのに」


ようするに、一人で行ってた時は寂しかったのだろう。
そんなNに、じゃあ帰りに図書館寄ろうか、と言うとさげていた頭を勢いよくこちらに向けた。
「いいの!?」
「うん、だって僕ら"友達"だろ?」

「ありがとう」


にっこり笑ったNに胸が痛んだ。
いいんだ、今は"友達"のままで。
ゆっくり、それで確実にNとの距離が縮んでいけば。
そんな事を思いながら、僕らは学校に向かう事にした。


「お前なんで今日起こしに来なかったんだよ」


案の定トウヤは遅刻ギリギリで学校にやってきた。
少し怒ってるトウヤに自分で起きないのが悪いんだろ、とか思ったけどそれを口に出したところで喧嘩にしかならないのは僕が一番理解してる。
(メンドーな事は避けたいんだ)


「あぁ、Nにこの町を色々教えながら来たんだ、だから今日も帰りが遅くなるから先帰ってて」


そうは言ってみたものの、納得がいかないのかぎろりとNを睨みつけたトウヤ。
そしてびくりと怯えるNに、トウヤは悪い奴じゃない事を伝えると、少し安心したのか視線をゆっくりトウヤに戻すのだった。


「チェレンちょっといい?」


トウヤが僕を呼んだ。
正直嫌な予感しかしなかったけど、大事な話だなんて言われたら断れる訳がないんだ。
Nに少し待っててと伝える。そしてトウヤに手を引かれるまま教室の隅に連れていかれた。いつまでも口を開かないトウヤに若干イラつきながらも待ってると、トウヤは戸惑いながらも口を開いた。


「まさか、チェレンNの事好きなの?」

「えっ」


想像もしていなかった問い掛けに僕はマヌケな声を出してしまった。
ただならぬ空気に僕がプラスにならない事なんだろうとは察していたけど、こんな事だなんて。
しかも僕の気持ちをまさかこんな簡単にばれるなんて。
平然を装おうとしたけど、トウヤの次の一言でそれが無駄だったと確信する。


「チェレンも恋するんだね」


馬鹿にしたようににそう言うトウヤに僕はうるさいとしか言えないのだった。


「まぁ、せいぜい頑張りなよ」


トウヤがそう言ったのと同時にチャイムが鳴り響いた。
チャイムが鳴っているのにも関わらず、教室から出ようとするトウヤに何処に行くんだと僕は問い掛けたのに答えは返って来ない。
呆れながらも、自分の席に戻ろうとすればNとすれ違った。


「N!?」


Nはトウヤの背中を追って教室を飛び出した。
僕も追い掛けようと思ったのに、担任の座れと言う声によってその選択は出来なくなるのであった。
この時少しだけ嫌な予感はしてたんだ。


持ち

(僕はこんなにも君が好きなのに)




2010/10.03






 
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