俺は今、遅刻ぎりぎりで全力で学校へと続く道のりを走ってる。
理由はいつも起こしに来てくれるチェレンが俺の家に来なかったからだ。
なのに今日ときたら、携帯に今日は先に行くから、という一言のメールが送られてきてただけ。
(学校に着いたら問い詰めてやる)
俺はそんな気持ちを胸に、走るスピードを上げた。


────……


クラスの前まで行くと、珍しくざわざわとしていた。
何があったんだ、そんな事を思いながら皆の視線を辿っていくと俺は言葉が出なくなった。
なんと昨日まで誰にも関わる気がなかったNが楽しげにチェレンと話していたのだ。
正直昨日と180度性格が違うNに俺の頭は混乱する。たった昨日の間にチェレンとこいつの中に一体何があったんだ、訳わかんねぇ。
でもそんな事は後回し。
今はチェレンが朝起こしに来なかった理由の方が大事だ。


「チェレン…」

「あ、トウヤおはよう」

「お前なんで今日起こしに来なかったんだよ」

「あぁ、Nにこの町を色々教えながら来たんだ、だから今日も帰りが遅くなるから先帰ってて」


そう言ってまたNに視線を向けるチェレン。
なんだよ、それ。
なんでチェレンはそんなに楽しげなんだよ。
むかつく。
ちなみに言っておくが俺はチェレンが好きとかそういう訳じゃない。
自分の大切な親友が後から来た奴に掻っ攫われるなんて、誰だって嫌な気持ちになるだろ?


「………」


おろおろと俺を気にしてるNにイライラした。
ぎろりと睨み付けるとびくりと怯えるN。


「N?トウヤは悪い奴じゃないよ」

「……」

「チェレンはこいつと何があった訳?」

「昨日友達になったんだよ」


友達?チェレンが?
そんなの一切作ろうとしなかったのに。
本当何があったんだ。
そう思っていた俺の頭に"恋"という文字が過ぎった。
(まさかね、でも確認する必要はあるよね)
「チェレンちょっといい?」

「え?なに?」

「大事な話し」


俺がそう伝えると、Nに少し待っててと言って教室の隅に移動をした。
小声で、大事な話しってなんだよと言うチェレンに少し戸惑いながらも口を開く。


「まさか、チェレンNの事好きなの?」

「えっ」


そわそわと視線を泳がせるチェレンに僕は確信した。
こいつは間違いなくNに恋をしている、と。


「チェレンも恋するんだね」


馬鹿にしたように話せば、うるさいと一言。
正直、応援は出来ないな、と思った。
だってNは何を考えてるのか分からない。
(あんなのの何処がいいんだか)


「まぁせいぜい頑張りなよ」

「あ、トウヤ何処行くんだよ!」


俺らの会話が終わったと同時にチャイムが鳴った。
勉強とかそういう気分じゃなかった俺は教室を普通に抜けて屋上に向かったのだった。


なじみ

(チェレンが俺から少し遠くなった気がした)





2010/10.03






 
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -