月下さまキリリク(チェレン→N←主♂)
「ブラック、僕のNに近寄らないでくれない?」
「は?いつからNはチェレンのものになったんだよ」
「腕、痛いんだけど」
僕がそういうと、チェレン君がNが困ってるだろ、と言う。
そのチェレン君の一言でブラック君達の喧嘩はさらにヒートアップした。
(言わなきゃよかった)
ちなみに、僕の右腕にブラック君、左腕にチェレン君が掴み、ぐいぐいと引っ張り合ってる為、僕は逃げるという選択が出来ない訳だ。
「あのさ、僕があたかも君達のものみたいに言ってるけど、僕は誰のものでもないから、二人共いい加減腕を離して」
「え?Nは僕のものじゃないの?」
「…ブラック、いくら幼なじみだからってその発言は気に入らないね」
「チェレンに気に入られたくなんかないね」
ぎりぎりと睨み合う二人を見てため息が出る。
僕は普通にこの二人とトモダチになりたいだけなのに、どうやら彼らは違うようで。
何故ブラック君達は皆で仲良く、という事が出来ないのだろうか。
「君達さ、なんで仲良く出来ないの?」
「仲良くする気が僕にはないから」
平然とそう答えるブラック君に同意見だ、とでも言うように頷くチェレン君。
君達幼なじみなんじゃないの、僕がそう問うとチェレン君はそうだよ、と言った。
…僕はてっきり幼なじみというのは、仲が良いものだと思ってたよ。
「あのさ、喧嘩するなら二人だけでしてよ、僕まで巻き込まないで」
「あのさ、Nが僕らのどっちがいいか選ばないからこんな事になってるんだけど」
「ブラックの言う通りだね、もうメンドーだからこの場で決めてもらおう」
「そうだね」
なんかすごく面倒な事に持ち込まれてる気がする。
いや、確実に面倒な事になってる。
どうしてこうなったんだ。
さっさと選べ、と言わんばかりの雰囲気に頭が痛くなってくる。
何故僕がこんなめに合わなきゃいけないんだ。
「どちらも両方同じくらい好きなんだ、選べと言われても困るよ」
これが本心。
でもこんな答えを彼らは求めていない。
二人共納得いかない、という表情をしていた。
「N、僕らが欲しいのはそんな答えじゃないんだよ」
ほらね、やっぱり。
でもそんなん言われたって選べないのは選べないんだ。
「…だって僕が今のところ1番好きなのはポケモンなんだ」
「……」
「僕は二人と普通に仲良くしたい、だからどちらか一人を選べなんて言われても無理だよ」
ごめんね、小さく謝るとポン、と肩に手が置かれた。
「まぁいいや、僕がNの1番に絶対なってやるからね」
ブラック君はそういうとにっこり笑った。
そして今度はチェレン君に頭をガシガシと撫でられた。
(僕の方が背も歳も上なのに…、なんか変な感じ)
「ゆっくり僕の事好きになってよ」
ふわり、と笑ったチェレン君に僕も思わず微笑み返してしまった。
「…N、それ反則」
「え?」
そういってチェレン君は僕の頭を引っつかみ、唇を寄せる。
いきなりの事で抵抗が出来なくて、頭の中は真っ白になって。
あとすこしで唇が重なるって時に僕の前からチェレン君は消えた。
正確に言うとブラック君がチェレン君を蹴り飛ばしたのだ。
「チェレン、今Nに何しようとした」
「いったいな、何ってキス」
チェレン君が平然とそういうと真っ白になってた僕の頭が、さっきチェレン君が何しようとしてたのが明確に分かってしまい、顔に熱が集まる。
「び、びっくりした…」
へにゃへにゃとしゃがみ込む僕。
慌ててよってくるブラック君。
「大丈夫N?」
「うん…、びっくりした」
「僕が消毒してあげようか?」
ゆっくり近づいてくるブラック君に今度こそ危機感を感じて、慌ててブラック君を突き飛ばした。
そして僕はその場から逃げ出した。
(心臓がいくつ合っても足りないよ!)
2010/09.30
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