ともちめ様キリリク。


チェレン×N




だんだんと肌寒くなってきた季節のなか、僕はNに呼び出された。
寒いのはあんまり好きではないから、本当は外より室内で話しをしてくれたほうがうれしかったけど。
マフラーを巻いて目的の場所に行けば、冷たい風にあたって少し震えるNがいた。


「何の用」


僕がそう聞けばNはそわそわする。
目は合わせてやらない。
少しの間、彼が話すのを待ったけど、全く口を開く様子のないNに用がないなら帰るよ、と言うと待って、と初めて彼が口を開いた。


「なに?僕寒いの苦手だから、さっさと用件を伝えてほしいんだけど」



冷たくそう言い放てば、俯くN。
べつに僕はNが嫌いな訳ではない。むしろ好きだ。
でも彼を見てると意地悪したくなってしまう。
ようするに、好きな子ほどいじめたくなる、というあの現象。



「僕、チェレン君に嫌われてるのかな?この間ブラック君に相談してみたんだけど、直接本人に聞けばって言われて…、でも嫌いって言われるのが怖くてなかなか言い出せなかった、ごめんね」


早口で、目にいっぱい涙を溜めてそう告げられた。
まさかこんな可愛い事を言われるとは思っていなくて、言葉が出なかった。
ブラックに相談したっていうのがなんか気にくわなかったけど、すぐにそんなのどうでもよくなった。
いつまでも口を開かない僕を不安げに見るN。
そして、どんどん思考を悪い方に向けていったのか、その表情は青ざめてきた。


「ごめんね!言いたい事まとめたはずなんだけど、意味わかんないよね!またね!」


どんな答えに辿り着いたのか知らないけど、何で逃げるんだよ。
僕に背を向けたNを追いかける。


「待って!!」


そう言っても止まる様子もないNに、僕はありったけの力を込めて、鞄から手探りで取り出した本を投げ付ける。
それは綺麗にNの後頭部に直撃して、彼がすっ転んでいる間に僕は全速力でNに近づき、やっと追いついた。


「いたたた、」

「何で逃げるのさ」

「だって、」

「だって?」


嫌いって言われたくなかった。
彼は帽子を深く被り、きゅっと唇を噛む。



「あのさ、」

「やだ!聞きたくない!」

「聞いて」

「やだやだ!」


僕が口を開けば、それを遮るかのように駄々をこねるN。
小さくため息を吐いて、僕はNの口を手で塞いだ。


「んー!!」

「僕、Nの事嫌いじゃないよ」


口を塞いでいた手を離してやる。
へ、と間抜けな声をあげ、Nは目をぱちくりさせた。


「だって…」

「好きな子ほどいじめたい体質みたいで、ちょっと意地悪しすぎた、ごめん」


チェレン君のばかぁー、と子供みたいにわんわん泣く。
ごめん、ともう一度呟いて頭を撫でてやる。


「いきなし目も合わせてくれなくなるし、話もそっけなくなるし不安になったんだから」

「Nの反応が面白くてつい…」

「もうやだ!」


指でNの涙を拭ってやると、Nはへくしっとクシャミをした。
きっと彼の事だから、僕と約束した時間よりずっと前から外で待っていたから風邪でもひいたんろう。
そんな事を呑気に考えていたけど、目の前にいた僕はもろにNの唾を浴びる訳で、


「あ、ごめん!」

「いいよ、これでおあいこね」



ゴシゴシ顔にかかった唾を拭う。
隣でNが小さく笑った。


さぁ、ろうか。
(僕の首にかかったマフラーをNの首にも巻いてあげると彼は微笑んだ。)




2010/10.23
ほのぼのってなんですか。










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