「お姉さん!チョコレートパフェ3つ!」

「私はご飯と味噌汁ヨロシ!」

「僕はじゃあ、このAランチってやつを!」

「じゃああたしは土方のミンチ、」


ちゃっかり奴らと紛れ込んで、どんでもねェ注文をしようとしてる総羅の頭を掴んで机に叩きつける。
鼻を強打したのか、総羅は鼻血を流していた。

(俺には関係ないけどな)



「いったいなー、何するんですかィ土方コノヤロー」

「そうだよー、土方君!女の子に乱暴は駄目だよー!愛想つかれちゃうよー」

「そうネ、お前よりいい男なんて何万といるアル」


ニヤニヤしてそんな事を言ってくる奴らにイライラが募る。
勝手に勘違いしては、勝手に口出してきやがって。
無駄な事とは分かってたけど、俺には奴らを睨みつける事しか出来なかった。


「で?何でいきなり真選組に沖田君の妹が?」

「総羅でいいですぜ、天パ」

「じゃあ総羅、俺は坂田銀時、銀時でも銀ちゃんでも好きに呼んで!銀さん的には銀ちゃんがいいかな」

「あ、僕は志村新八です!ほら神楽ちゃんも!」

「おう!私は神楽ネ!歌舞伎町の女王とお呼び!」


小さく奴らの、名前を確認して覚えようとしてる総羅。こいつはこいつなりに、真選組と関わりがある奴はしっかり覚えておきたいらしい。
だけどな、


「こいつらの名前は覚えとかなくていいぞ、時間の無駄だ」

「あらあら、まさか俺に総羅ちゃん取られるかもってヤキモチ妬いてんのー?」

「お前案外独占欲強いアルなー!」

「うるせェんだよお前らァァァ!!!」


ニヤニヤしながらこちらを見てくる万事屋達にぷつりと俺の我慢の糸が切れた。
刀を鞘から抜いて奴らに斬りかかろうとすれば、すかさず後ろから総羅が俺を押さえ付ける。


「みっともないからやめなせェ、一緒に居るあたしが恥ずかしい!それにあんたもあたし達の間には何もねェってさっさと言えばいいのに」

「え?何もないの?」

「えぇありやせんぜ、あたし達はあくまでも上司と部下の関係でさァ」


へー、と頷く天パを横目に俺はゆっくりソファーに座り込む。俺が落ち着いたのを確認した総羅は俺から手を離した。
それとほぼ同時に店員が、注文した品を次々にテーブルに置いて去っていく。


「やっぱりチョコレートパフェは美味いなー!」

「久しぶりに僕らまともな食事しましたよ」

「可哀相な連中ですねィ、ひじか…」


途中で言葉を詰まらせる総羅を不思議に思い見てみると、視線はどうやら俺ではなく、俺が頼んだカツ丼に向けられていた。
そしてぽつりと一言呟いた。


「総悟の言ってた通りでさァ…」

「…どういう意味だ?」

「どういう意味も何も…、なんですかその犬の餌、いや犬でも嫌がって食いませんぜ、汚ねェ」

「土方スペシャルの何がいけないんだァァ!!ちょっと騙されたと思って一口食ってみろ馬鹿!!」


そして、箸で土方スペシャルを掬って総羅に差し出す。一瞬嫌そうな顔をしたけど素直にそれを口に入れた。


「…うわー、やっぱり見た目通りの味だ」


近くに置いてあった水を一気に飲み干し、眉間にシワを寄せた。なんでこの美味しさが分からないのか、俺には全く理解が出来ない。
まあいい、とりあえずさっさと万事屋達から解放されたかった俺は頭一杯に浮かんだ文句を飲み込み奴らに視線を向ける。


「……なんでお前らニヤニヤしてんだよ」

「えー、だってねえ?」

「あの鬼の副長とか言われる奴がヨ?」

「女の子にあーんしたよ!!」


そう言うや否や、ギャハハハと笑う奴ら。本当に俺はこいつらが嫌いらしい。


「なんなんだよお前ら本当によォォ!!もういいだろ、飯ご馳走してやったんだから!!今日の事は忘れろ!!」

「沖田君に、総羅と土方君が手繋いで、しかも犬の餌を土方君が、総羅にあーんしてたなんて言ったら沖田君きっと怒り狂っちゃうだろうねー」

「ぷくく、あいつ意外とシスコンそうだもんネ」

「それにまだ聞きたい事とかありますし」


奴らが悪魔に見えた。当の総羅は面白そうじゃないですかィ、なんて言ってる。お前はよくても俺が駄目なんだよ。総悟がどれほど総羅が好きかお前は知らないだろ。
言いたい事は山ほどあったけど、それを話しても無駄な事ぐらい一番俺が理解してる。
今日だけで、一ヶ月分の疲れが俺を襲ってきた気がした。


「まあいい、話を戻すけど何でいきなり沖田君の妹が幕府の犬の所に?」

「あたしが今まで、総悟に会ったのなんて片手で数えられるくらい少ないんでィ、それまでずっと親戚の所に預けられてて、」


そんな話、総悟から聞いた事なかった。心なしかそう話す総羅の表情は寂しげに思えた。


「でも小さい頃から剣の訓練はしてやした、そんで風の噂で総悟が幕府の犬になったって聞いたんで飛んで来たんでさァ」

「…そうだったんですか」

「あ、そうだ!あんたら総悟に手出したらぶっ殺すんで」


前にも聞いた事がある台詞。でも前よりももっとどす黒くて、その場を凍らせるのには十分すぎるくらいだった。





(考える事は一緒なんだな)




2011/01.19




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