「沖田総羅でさァ、総悟の双子の妹ですどうぞよろしく」


棒読みでかったるそうに俺と近藤さんに自己紹介をするそいつは、1番隊副隊長を務める。つーか総悟に双子なんていたなんて聞いてねぇ。つーかそれ以前に女なんて認めねぇぞ。やる気もねぇみたいだし。
とにかく第一印象は最悪のこの女。しかも総悟の双子の妹っつーのがもう駄目。仲良くやっていける自信がない。
俺が険悪な視線をそいつに向けてるのも気にせず、笑顔で口を開いた。


「で?土方コノヤローっつーのはどいつですかねィ」


ああ、俺の嫌な予感はよく当たるんだ。隣に居た総悟がニヤニヤしながら、こいつですぜと俺を指さした。
もう総羅と俺は敵決定。仲良くやれない。これは断言できる。


「へー?思ってたより色男じゃないですかィ、総悟からは犬の餌しか食わねえイカレ野郎って聞いてたのに」


そういって、ずいっと俺に顔を近づけてまじまじと見つめる総羅。ちょっと近すぎるだろ…。顔は、もともと整った顔の総悟に似て、綺麗というより可愛いという分類に入るタイプだ。
つーか総悟にぼろくそ言われてたのが気にいらねぇ。だから総羅から視線を外し、総悟に向けた。別に、総羅が思ったより可愛くて、急に恥ずかしくなったとかそんなんじゃねぇ。
顔が赤くなってやせん?と聞く総悟に気のせいだ、と一喝。
何度も言うが恥ずかしくなんてなってねえからな。


「…土方さん耳かして」


急に真剣な声で俺を呼ぶ総悟。何事かと耳を奴に預ければ、どす黒い声で一言呟いた。


「総羅に手ェ出したらてめぇぶっ殺すからな」


思わず身震いした。おいおい、俺総悟と随分一緒に居るが、こんなどす黒い声聞いた事ねぇぞ。
不思議そうにこちらを見つめる総羅を横目に見てたら、返事を急かすかのように奴は俺の足を思いっきり抓る。
もう選択肢なんて一つしかなかった。


「…はい」


だいたいよく考えてみろ。100歩譲って俺が総羅に想いを寄せたとしても、現在進行形で俺の足を笑顔で抓ってる、俺の事が殺したい程憎い奴の妹だ。
そんな奴の妹が俺に想いを寄せる訳がない。総羅は確かに可愛いとは思うがそれだけだ。きっと相性はかなり悪い筈だから、俺も好意なんて持たないだろう。現に俺は総羅の第一印象はよくない、むしろ悪い方だし。

でもなんで返事に少し俺は戸惑ってしまったのか分からねぇが、とりあえず何が言いたいかと言うと、俺も総羅もお互いに好意を持つことは0に等しいって事だ。


「これからよろしくお願いしやす、局長さん」

「よろしくな!それと俺は近藤勲だ」

「あなたが近藤さんですかィ!総悟から話は聞いてやす!」

「総羅ちゃんみたいな美人がはいったら、男ばかりでむさ苦しい真選組も明るくなるなぁ!」

「やめて下せェ、恥ずかしい」


がはははと笑う近藤さんと、小さく照れ笑いをする総羅。気づいたら俺の足を抓ってる手には力が入ってなく、微笑ましそうにそのやり取りを総悟は見つめていた。(こいつもこんな顔すんだな)


「おいトシ、お前も総羅ちゃんに自己紹介ぐらいしたらどうだ」

「近藤さん、総羅でいいですぜ」


とりあえず近藤さんに自己紹介しろと言われたらするしかない。
仕方なく、俺は口を開いた。


「副長の土方十四郎だ」


別に必要最低限の、これぐらいでいいだろう。他に話す事なんてねぇし。


「………」

「それじゃあ総羅に屯所内を案内して来やす」

「おう、いってらっしゃい」


総悟はそう言うや否や、総羅の手を取ってすぐに部屋から出て行った。
つーかあれ?


「いやあ、総悟も嬉しそうだなー」

「近藤さん」

「ん?なんだ?」

「俺、完全に総羅に無視されたよな」

「そりゃ総悟の双子の妹だからな」

「だよな…」


はあ、とため息をつく俺。
なんでかは分からない。
ふ、と先ほど総悟が総羅の手を引いて部屋を出た時、一瞬だけ見た総羅の横顔を思い出した。
そして頭の中で現れるのは、ずっと前に想いを寄せたあいつ。
また俺はため息を一つこぼし、頭を抱えた。

「…いくら妹だからってミツバに似過ぎだろ、」






(総羅をもういないあいつと重ねてしまった俺がいた)





2011/01.13

未練たらたらの土方さん可愛いよね。




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