家庭教師宮地さんと緑間くん2 | ナノ




「さっきからなんなんだよ、お前の態度」



お馴染みの赤ペンをくるくると回し、不機嫌そうに頬杖をつく家庭教師。態度のことについては正直この人にとやかく言われたくなかった。視線を家庭教師から問題集に移せば舌打ちが一つ。ほら俺の何倍もこの人のほうが態度が悪いじゃないか。
そもそもこの家庭教師はこんなに不満を表に出したりはしなかった。俺に対する態度が、がらりと変わったのはこの前のラッキーアイテムやら語尾やらについて揉めてからだ。やっぱりあの時仕留めておけば…。後悔先に立たずである。



「なに、お前そんなに俺のことが嫌いなわけ?」

「はい」

「そこはちゃんと返事すんのな、埋めるぞ」



俺はこの人が苦手だ。今の様に笑顔で毒を吐くところや、何も言い返せぬような高圧的な態度。きっと相手も同じ様に俺が苦手だろう。だったらさっさと俺の担当から外れてしまえばいいのに。だがそうはいかないからまだ俺の面倒を見ているんだろう。
全ての空欄をうめた問題集を家庭教師の目の前に置く。これで今日の分のノルマは達成したはずだ。さっさと採点してさっさと帰れ。そんな俺の思いを知ってか知らずかいつまでも採点しようとせず俺を見つめるだけ。きっとこいつの場合前者で間違いはないだろう。これほど性悪なやつはなかなかいない。



「…はやく採点してもらえますか」

「だってお前、さっさと帰れって顔に書いてあんだもん。お前の思い通りに動きたくねえし」

「仕事しろ、家庭教師」

「あ?つーかさお前、俺の嫌いなとこ10個言ってみろよ」

「は?」



いきなり何を言い出すんだ。10個どころかその倍ぐらい余裕で言えるが、言ったところでこいつはどんな反応をするか目に見えている。笑顔で毒を吐くどころか、手を挙げられたってこの人の場合おかしくないだろう。何故そんな俺にとっても相手にとっても不利益なことが考えつくのか、俺には全く理解できん。



「なら貴方が言えばいいだろう」

「何をだよ」

「俺の嫌いなところに決まっているのだよ」

「は?何で俺が?」

「…何でって、」

「別に俺はお前の事嫌いじゃねえし、むしろ好きの分類にはいる」

「は?」



何その顔、と吹き出した家庭教師。それほど俺は間抜けな顔をしていたのだろう。嫌いじゃなく好き?誰が誰を?家庭教師が俺を?いやそんな訳はない。だいたい好きだったらこんな態度、普通はとらないだろう。またこの家庭教師は俺をからかっているに違いない。どこまで俺を馬鹿にすれば気が済むんだか。さっさと帰ればいいのに。



「信じねえならいいわ」

「…早く採点お願いします」

「うるせえ今からやんだろ黙ってろ」



やっと赤ペンの蓋を外した家庭教師。やっと帰ってくれる、と安堵の息が漏れたと同時に疲れが一気に押し寄せ思わず机に突っ伏してしまうのは仕方ないことだと思う。
寝るな馬鹿、と聞こえた気がしたがそんなの知るか。




2012/10.03



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