来世で会いましょう | ナノ



今目の前を自転車で通ったあの女の人も、ベンチで退屈そうにタバコを吸ってるあのサラリーマンも、あの猫だって、死んだら悲しむ者がたくさん居るんだろう。
その有り難さすら知らないで、当たり前過ぎて見つけられないで。口を開けばきっとどいつもこいつも弱音ばかりの甘ったれに違いない。僕は一人で孤独だ、だから構っておくれ、と全身に書いてある。バカバカしい。
無性にイライラしたから自動販売機の横にあるゴミ箱を蹴飛ばした。集まる視線にはどれもこれも軽蔑が含まれていた。

ああいう奴が犯罪を犯したりするのよ。

怖いわね。

どこからか聞こえてきた声に、笑いが込み上げてきた。あたしは別に誰が死んだって構いやしない。だけどそれを酷く悲しむ者が現れちゃもう見てられない。そいつの為に全力で泣く奴がそりゃ哀れで、哀れで仕方ないのだ。
そういやさっきのあいつはどうなんだろう。あいつの為に泣いてくれる奴は居るのだろうか。
あいつはお前と俺は似てる、って口にしてたけどきっとあたしの同情を誘ってお涙頂戴、って魂胆なんだろう。見え見えだ。そんなのあたしには必要無いし、一緒にしないでほしい。
多分生きてきた中で一番と言っても過言ではないほどに腹がたった。だから刺してやった。喉を刺したから一発だったと思う。

あいつには悲しんでくれる人が居たんだろうか。

あいつの隣には常にあたしが居た様に思える。他の奴らはいなかった。いつも二人だった。
そういえば夏は二人で海に行った。子供みたいにはしゃいだのを覚えてる。
違う、あたしは常に一人だったはずだ。あれは断る理由なんて別に無かったからあいつに付き添っただけで。
どの記憶にもあいつが居た。笑顔のあいつが。


きっと同情されたのがムカついたんじゃなくて、あいつはあたしの為に泣いてくれないと悟ったからムカついたのか。

嗚呼、馬鹿だ、あたし。瞳から熱いものが零れた。あいつの為に泣いてしまった。あいつはあたしの為に泣いてはくれないというのに。あいつは結局あたしと同じなんかじゃない。あいつは十分幸せ者じゃないか。



「ひ、じかた、さ」



あいつの名前を口にしてみたら重いなにかが頭にがつんとぶつかったような気分になった。
犯罪者だ、あたしは犯罪者。その通りなんだ。誰が死んだって構いやしないのに、あいつだけは違ったみたい。



「あアア亜アあアあああ゙!!!」



更に集まる視線なんかもうどうだって良い。この際だから集まってる野次馬共全員にトラウマを植え付けてやる。
あいつを殺したナイフであいつと同じ様に喉を切った。

飛び散る赤に、来世でもあいつに出会える様に神様に願いました。
空はそんなあたしを嘲笑うかの様に真っ青でした。



来世で会いましょう
(その時はきっと、)




2012/03.14


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