あ、おちた | ナノ




「あ、落ちた」



ケラケラと笑う少女を呆然と俺は見てた。おい冗談だろ、と聞くも返事のかわりに笑いながら番号の書かれた紙を差し出された。
小さな紙には3440と書かれている。紙と掲示板に視線を何度か往復させその番号を必死に掲示板から探す。
3425、3432、3438、3442、3449。
何度見ても、その番号が掲示板に載ってる事は無かった。言葉に詰まる。落ちたのだ、彼女は。だが当の彼女はそんなの気にした様子は無く、あたしの魅力に気づかないなんてー、と冗談を嘆くくらいだ。
ふっざけんじゃねえ。



「番号間違って渡されたんじゃねえの?」

「沖田総羅って名前書いてあるし」

「いやでも、」

「いいよ別に第二希望のとこ受かってるし。土方さん此処受かってよかったね。おめでとー」



さー、帰ろうと鞄を肩に掛け掲示板に背中を向けた彼女を追いかける。悲しくねえのか、と口にしても何言ってんの?と返事が来ちゃ、もう俺から何も言うことはない。
それはきっとすごく悲しかったんだろう、

俺が。


馬鹿みたいじゃねえか。さりげなく、本当にさりげなくあいつの行きたい高校を聞いたのが。馬鹿みたいじゃねえか。偶然を装って行きたい高校が同じだからと二人で居る時間を増やそうと、仲を深めようとしたのが。馬鹿みてぇじゃんか。必死に勉強してたのが。同じ高校に入学してこの関係をより深め、恋仲になれたら、と思ってたのが。
馬鹿みたいじゃん、か。

これでこのまま春になったら行き先も違って話す機会もぱったり無くなり連絡も途絶えてバイバイ、ってなっちまう関係なんだよ、まだ俺達は。
それでもこれ以上何もすることが出来ない。もうあいつに会う為にこじつけてきた理由は使いきった。ここまでなんだ。これ以上は何も…、あ、一つだけある。まだ、まだ足掻ける。
遠くなる背中を大声で呼び止めた。



「うるっさいなあ、なに?」



振り返った彼女の顔は、不機嫌という言葉がぴったりだった。
そんなの気にしてたら埒が明かない。だからまた大声で言ってやったんだ。甘ったるい言葉を吐いてやった。
少ししてから赤く染まった顔の彼女が慌ててやって来て俺の頭をぶん殴った。初めて見れた表情だったから結果はどうであれマイナスになる事はないだろう。

俺はあの後本当にぼこぼこにされた。彼女がか弱い少女とは真逆に居る存在の事を忘れてたからだ。気が済んだ彼女は恥ずかしくて死ぬかと思った!と口にした。俺はケラケラと笑った。


あ、おちた
(この時の話を彼女にしてみたら前と同じ様に赤くなり俺をぶん殴った。)




2012/01.27




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