最低最悪の奴 | ナノ






今日はノートが3冊ダメになったのと、机に花瓶が置かれてたのと、合計12回殴られただけ。まだまだ全然良い方だ。



「あーあ、こんなのの何が楽しいんだか」



大量に落書きされてもうノートとは言えないソレを摘み呟く。死ねだの消えろだの悪口のレパートリーの少なさに呆れる。

本当馬鹿馬鹿しい。


あたしは所謂クラスではいじめられっ子だ。別にくだらないし気にしちゃいないんだけど。
あたしがもしもいじめっ子だったらもっと徹底的にやるのになあ。あいつらもまだまだ。所詮高校生のガキだもんな。あたしも高校生のガキなんだけど。



「やるならもっとあたしが死にたいって思えるまでやりなさいよ」



本当中途半端、と呟きながら汚いノートをごみ箱に投げ込む。
誰も居ない静かな教室だったからやたらあたしの声が響いた。
クラスの奴らは体育の時間で今は校庭に居る。あたしは仮病で体育を休んだ。



「もっと本気の殺意を向けなきゃ…、」



全然恐くもなんともない。昔のあの出来事にくらべりゃ、なんにも。あたしをこんなにした1番の原因はソレにあるくらいだから。
絶対忘れる事の出来ない、あたしの唯一の"トラウマ"と呼べるだろう。
カタカタ、と震え出した右手を見てあほらしいと思った。今もあの恐怖は変わらず健在だなんて。



「あたし、だっさ…」

「お前一人だとべらべら喋るんだな」



慌てて声のする方に振り向けば、黒髪で目つきの悪い男。
見覚えはなんとなくあるけど名前なんて知らないし、興味ない。
こっちに近づいてくるそいつに、なんとなく後退りをすればガタリ、と机が動いた。



「沖田サン、そこ邪魔だからどいてくんね?」

「…はい?」

「あんたが居るそこ、俺の席だから」



なんか言い方があたしの癪に障った。だからそいつの椅子を蹴り飛ばしてやった。
あいつの椅子が3つ先の席まで飛ばされたのをあたしは黙って見つめる。



「それは非常識なんじゃねーの?」

「………」



なんか面倒になってきたからクラスを出ようと足を進めれば、すぐに掴まれる腕。ああ、もう最悪。余計な事すんじゃなかった。面倒くさいな。



「…なに」

「なんか言うことあんじゃねェの?」

「汚い手で触んじゃねえよ、ゴミクズが」

「はッ、言いやがるなテメェ」



ニヤリ、と笑ったこいつに唇をふざかれるまで何秒かかっただろうか。



最低最悪の奴
(呆然としてるあたしに「面白いな、」と笑った奴の顔は二度と忘れる事は出来ないだろう)



2011/08.23