て様キリリク
初期土方←初期沖田
「ねえ、本当は気付いてるんでしょ?」
「なにがだよ」
(あ、動揺してる。)
本人はきっと平然なフリを装ってるんだろうけど、刀を手入れしていた手があたしの問い掛けと同時にピタリと止まった。
これはつまり内心ものすごく動揺していて頭の中が真っ白になったということだ。
何年あんたと一緒に居ると思ってんのさ。こんなあからさまに焦ってるのがバレないとでも思ってるのかこいつは。
「わかりやすいですね」
「な、にがだよ!さっきからお前さっぱり意味わかんねェ!」
「ずるいです、本当あんたは」
珍しく無理矢理笑顔を作れば、その言葉の重みに気付いた土方があたしに向けていた視線を下におろした。
そういう態度逆にキツいものがありますよ、と言えばまた一度だけ視線をあたしに向けるもやっぱりすぐにそらしてしまう。
「本当今日のお前可笑しいぞ」
土方は笑いながら冗談っぽく口にしたけど、残念ながらあたしは全く笑えないし、冗談としても捉えられなかった。
それは勿論あたしが、初めから冗談としてこの話を持ち掛けた訳ではないから。
いつまでも表情を崩さないあたしを見て土方の笑顔はゆっくり消えてゆく。
今、あたしが土方に迷惑をかけてるのなんか当然の様に分かるし、困らせてるのだって、相手があたしとこの距離感が1番良いと思ってる事だって分かってる。
だけど、こんな生温い関係をいつまでも望んでいないのはお互い同じで。
この生温い関係が崩れて、お互いが離れて行ってしまうのを恐れてるのもきっと同じで。
それでもどちらかが一歩踏み出さなきゃこれからずっとこの生温い関係は変わらないままなのに本当この男ときたら、
「根性無し」
自分では冷たく言い放ったつもりでも、聞こえた声は思ってたより震えてた。
唇を噛み締める。別に泣きたい訳ではないけど、あたしがどんな思いで口にしたと思ってんだ、と思うとどうも悔しくて。
すると、くしゃりと頭を撫でられた。普段は暖かくて嫌いじゃないその行為すら嫌に感じて、思わず振り払ってしまった。
「ごめんな、」
謝罪なんか1番聞きたくなかったのに。
なんの事ですか、と強がらないと何かが駄目になりそうな気がした。
嫌いになれたらいいのに
(そのくるくるで邪魔な天パもあいつ独特のタバコの匂いも)
2011/08.29
リクエストありがとうございました。
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