誕生日の話2 | ナノ




「なに?お前、いじめられてんの?」



あれから俺らは屋上に向かった。なんでこんな暑い中屋上なんかに行かなきゃなんないのかはこの際もうほうっておこう。
しばらく無言が続いた俺らだが、銀八が何か決意したような顔でよし、とかなんとかぶつくさ言ってたらコレだ。



「いや、ごめん。だから学校行きたくなかったんだな!ごめん本当」

「おいおいちょっと待てコラ。別にいじめとかねェからな!つーかクラスの奴らがいじめなんかしねェ事お前が1番よく知ってんだろ!それよりお前、俺がなんで教室から追い出されたかだいたい予想ついてんじゃねェのかァ?」

「ねえ、なんでいちいち、ぇをカタカナにするの?」

「うるせー!!いちいち揚げ足取ってんな死ね!!」



もうなんでこんな蒸し暑い屋上で大声をあげなきゃなんねぇのとか、だいたいなんで屋上なんだよとか、さっきはスルー出来た事すら出来なくなってる程俺はイライラしていた。
別にぇをカタカナにしてもいいじゃねェか、とどうでもいい事に反論する程に、だ。



「もうお前うぜーよ!本当うぜーよ!」

「んー、じゃあそろそろ補習でもします?」

「は!?お前今日誕生日祝う為に俺を呼んだんじゃねェの!?」

「人生そんな甘くないよ、高杉くん。つーかもう暑いから早く中入ろーぜ」



なんなんだよ。本当に。
クラスの奴らは、じゃあ俺に嘘を言いやがったのか?何の為にだよ。あ、嫌がらせか。あいつらならやりかねねェ。
銀八が俺の為に皆を集めてくれたりして、少し嬉しいとか思った俺って馬鹿みてェ。
俺は銀八に手を引かれるまま屋上を後にした。
何処に行くのか、とかもう聞くのも面倒になっていた。




「高杉!おい高杉!」

「んだよ、うるせェな」

「何回も呼んでんのにお前無視するからだろ!」



ぶつくさ文句を言ってる銀八を無視して辺りを見渡すと、どうやらこいつの私物化された国語準備室に連れて行かれた様だ。
飲み途中のいちご牛乳やら、読み散らかしたジャンプがそれを表している。
お前だって授業をまともにしない癖に補習とか言ってるんじゃねえよ、と思ったが口には出さない。面倒だからだ。
何処から持ってきたのかは知らないが、無駄に綺麗なソファーと無駄に綺麗なテーブル。とりあえずそこに座れ、と言われ大人しく俺はソファーにどかりと座った。
ふかふかなのがムカつく。



「これどこから持ってきたんだよ」

「馬鹿校長からパク…、借りてきた」

「……お前よくクビにされないよな」



それは腕が良いからだ、と有り得ない言葉を奴は口にして、銀八は俺の隣に座る。妙に近い様な気がして、つい銀八から離れようとソファーの端に寄るが、銀八も同じ様に寄ってくる。

(なんなんだ、コレは…)

俺も奴も無言になり、なんだか気まずい空気も流れてきた。変に掌が汗で滲んで、この空気をどうにかしようと俺は慌てて口を開いた。



「お、おい、早く補習しようぜ!俺はさっさと帰りたいんだよ」

「…いやそれはちょっと待って」

「お前、俺をなんの為に呼んだんだよ…」



呆れてため息を吐く。隣ではスーハーと深呼吸をする音が聞こえた。本当訳わからない奴。
しばらくそんな事を続けていた銀八だが、いきなり両頬をパン、と叩いたと思うとこちらを真剣な眼で見つめる。
あまりにも奴の眼が真剣だから俺もついついゴクリ、と唾を呑んでしまった。



「あ、あのな!」

「なんだよ…!」

「うあー、あー、えっとな!」

「なんだよ早く言えよ」



こいつらしくなくてなんだか気持ち悪い。
だんだんイライラもしてきて、そんなに言いづらいなら言わなきゃいいじゃねェか、と思ったがあんなに真剣な眼をされてりゃ口には出せない訳で。
俺はただこいつの次の言葉を待つしかなかった。



「よしっ、言うからな!!」

「いいから言えよ」



またあいつは大きく深呼吸をして、




「誕生日おめでとう」




それだけ言うと銀八は小さく笑った。
そんな銀八になぜか急に恥ずかしくなり俺は顔を下に向ける。
くしゃり、と柔らかく俺の頭を撫でた銀八の頬もどこか赤い様な気がした。



誕生日おめでとう
(誕生日プレゼントは給料日までお待ち下さい、と言った銀八につい頬が緩んでしまった)




2011/08.11

長くなった割にぐたぐたですいません。
ちなみに裏話。
銀八が高杉の誕生日を祝ってやろうと思い、皆に連絡する。
なんか恥ずかしくなり銀八は当日に誕生日会に参加しないと皆に話す。
皆、銀八の気持ちに気付いてたからどうにかして高杉と二人にさせてやろうと頑張る。
誕生日会はどんな感じなのか気になった銀八は覗きに来る。
高杉が教室から追い出されてる。
クラスの皆ニヤニヤ。
お前ら、本当に…。だあああああああ!!!もういいよ頑張るよ俺!となる。
だから本当は補習に高杉を呼んだ訳ではない。
結局銀→→←高話だった。

とにかく高杉誕生日おめでとう!




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