笑ってみたけど結局無駄だった | ナノ




沖田←神楽



「私、お前が好きかもしれないネ」



顔に熱が集まる。鼓動が早くなる。こんな気持ちになるのはずいぶん久しぶりだ。私が言葉を発してから、まだ口を開かない目の前の男。ただ時間だけが過ぎていくなか、揺らぐ視線を奴に向けた時、やっと口を開いた。



「冗談ですよねィ?」



奴の口から出た言葉はあまりに残酷で。ふざけんな、と一発殴ってやりたかったけど困った様に笑うサドを見てたら全てを察してしまって。怒りが込み上げ、沸騰した頭が冷静を取り戻していき、無意識に振り上げた手を下におろした。
本当に心から好きだ、と初めて思った相手は私と喧嘩ばっかしてる奴で。素直になれない私はやっと想ってた事を口に出したのに。一歩踏み出せたと思ったのに。相手は私と一歩踏み出したくないみたいで。

(思ってたよりきついなあ…、)

私もまたいつものように笑って、



「冗談に決まってるアル。自惚れんなクソガキ」

「んだとクソチャイナ」



またいつもの様に私は奴に喧嘩をふっかけた。それにのってきたサドは先ほどの困った顔が嘘のように晴れてて。
本当単純な奴。喧嘩をする気力なんてもうどこにもないけど、いつもの様に変わらない日常を演じなければまた困らせてしまう。
いいんだ、もうこれで。




(ぼろりと溢れた涙を君は見て見ぬフリをした)




2011/07.27