正義感 | ナノ







正義ってさ、見方によってはだいぶ変わるじゃん?あたし達が"正義だ"ってやった行動も実は他の人から見たら正義なんかじゃ全然なくて。逆にあたし達が悪だ、と思ってる行動も向こうの人達からしたら全然正義ってよべてさ。
だから結局"正義"なんて言葉いらないんだと思う。それが絶対正しいって皆が思える事なんてきっとない。
だからあたしはね。


"正義"を意気揚々と語る人を冷めた目で見てしまうの。


ばっかじゃないのって鼻で笑って。そのあと気持ち悪いって。冷たいとか思いたきゃ思えばいいよ。別にそんな言葉であたしの意見を変えるつもりなんてないし。
ねえ、土方さん。



「今あたし達がやってる事って正義なのかな」



ちらっと周りを見渡せば、俺達が斬った奴らがごろごろと。すぐに少女に視線を戻せば、きっと何者にも染まる事ない真っ直ぐな目とかちあう。でもすぐに少女は俺から視線を外し、頬にかかった返り血を手で拭った。



「俺は人を斬るのに正義なんてないと思うがな」



そう言えばふっ、と小さく笑った少女。それもそうですね、と微笑んだ姿はどうも"1番隊隊長"と恐れられている奴には見えなかった。総羅の剣を振るう姿は鬼のようなのに、こういうところはやっぱり少女なんだと実感する。
それを横目で見た後、俺も口角だけを上げた。



「今は余計な事考えんな。目の前だけを見てろ」

「…分かりました」

「正義とかそんなんどうでもいいんだよ。だから、総羅死ぬな」



貴方もね、と小さく呟いた声をしっかり耳で聞き取る。総羅からそんな言葉が出るとは、なんて馬鹿げた事考えていたらもう目の前に敵意をむきだしにした奴らがうじゃうじゃと。
結局"正義"とやらを語ってたら俺達が今までやってきた事を全て否定する事になる。だから俺達にそんな言葉の必要性なんてないんだよ。

ただ曲がらないように、真っ直ぐな道を駆け抜けるだけさ。



正義感
(そんな感情なんてとうに捨てた)




2011/05.05