根性焼 | ナノ



沖田→初期沖田



もしも俺が今、隣で無防備に眠っている少女の兄じゃなかったら、って考える時がある。
そしたら今すぐにだってこの少女を襲う事だって出来たのかもしれない。少女に近づく野郎共をライバル視する事だって出来たのかもしれない。
でもそれをしないのは"兄"という立場が邪魔をするからだ。
だからもしもって考えたところで、それを実行に移す事は絶対出来ない訳で。つまり考えるだけ時間の無駄な訳だ。
それでももしもって考えるのはきっと俺が諦めの悪い馬鹿だからだろう。



「…そ、ご。おはよう」

「総羅ずいぶんと眠ってやしたね」

「昨日土方が寝かせてくれなくて」



目を擦りながらそう言う総羅。
ふっざけんな土方コノヤロー。俺の総羅が寝不足でぶっ倒れたらどう責任とってくれんだ。本当死ねよ。
ぽんぽんと生まれる土方への憎悪。でもそれをなるだけ顔には出さずそっけなく返事を返すのは自分の気持ちを悟られない為だ。

少しでも自分の気持ちが総羅に知られたらと思うと、思ってる事や行動が真逆になってしまうのは仕方ない事だと思う。



「そろそろ見回り行かなきゃ」



深くため息を零しながらゆっくり立ち上がる総羅に俺は"いってらっしゃい"と呟いた。
普段そんな言葉を言わないせいか少女は一瞬驚いた顔をして固まる。でもすぐにその表情は崩れ"行ってきます"と弾んだ声が返ってきた。
部屋の襖が閉まる音を背中で聞きながら、やっぱり自分の気持ちを知られるのは嫌だと改めて思う。あの俺に向けられた笑顔が消えてしまうと思うと複雑な気持ちになって声を上げて泣きたくなった。



根性焼き
(熱くて消える事ないこの気持ちはどうすればいいですか)





2011/05.28






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