反動 バタン。 ドアが閉まる無機質な音が部屋に響いた。瞬間、緊張感が解れさっきまでのいろんな感情が一気に溢れてきて。残念だけど、あたしはそこまで強い女じゃない。実際は強く見せてるだけ。じわり、目頭に熱を感じた。 ソファーに下ろしていた足を上げ、胸のところまで持ってきて所謂三角座りとやらをする。 膝に顔を押し付ければ、涙が零れてきた。ここまで我慢出来たなんてあたしって自分が思ってるより強い女なのかも、なんて馬鹿らしい事を考えてなければきっと止まらなくなってしまう気がして。 「畜生、なんであんな奴…、」 好きになんてなったんだろう。 本当あたしはつくづく見る目がない。いつも喧嘩ばっかしてた筈なのに。本当可笑しい。 考えれば考えるほどに可笑しくて。 でもやっぱり好きだな、って思って。 やっぱりあいつを忘れるなんて事は一生出来ないよ。ぎゅ、と掌に力を込めた。 鼻を啜れば密かに香る土方の匂い。それが更にあたしの涙を誘って。気づいたら嗚咽を止める事が出来なかった。 それでも何故か頭は冷静でいられて、このままじゃ土方に泣いてたのバレてしまう、とか思い、慌てて袖で涙を拭った。 これ以上あいつの為に泣くもんか、と唇を噛み締めればなんだか少しだけ高ぶる気持ちが落ち着けた気がした。 「…グスッ、」 鼻を啜る音が聞こえ、あたしはゆっくり瞼を開いた。 (アレ、あたし寝てたのか…?) あんな状況の中、寝れる自分の精神力に驚きながらも、辺りを見渡す。寝起きのぼやける視界に映るのは、ボロボロ涙を流す土方の姿。 一気に眠気は覚め、目も冴えてくる。それとは逆に思考はピタリと止まり、声が出せなかった。 「…ごめんッ、」 頭を乱暴に撫でられたあと、強く抱きしめられた。きっと奴はあたしが起きてる事に気づいてないんだろう。 でも、起きてようが、寝てようがそんな事をされるのは心外だ。フッた相手にそんな事するなんて。いくら優しいからにも限度がある。せっかく諦めようとしてるのに、そうやって、 期待させるような事して。 だから、ムカついたから、土方を思いっきり突き飛ばした。 いきなりの事で、与えた力のままソファーにぶっ倒れる土方。驚いてあたしを見る顔は笑いモンだった。 「そういうの、ずりぃと思うんだけど?」 「総、」 ゆっくり土方に跨がり、マウントポジションをとるあたし。 そのまま胸ぐらを強く掴んで引き寄せる。殴られるのかと反射的に目を瞑る土方をそのままぶん殴ってやっても良かったけど思いっきりキスしてやった。 驚いて目を見開く土方なんて知らない。舌を絡めてやった。抵抗はない。 無性に悔しくなって唇を離せば、透明な糸がひいた。 「お前なんか、嫌いだよ…」 「うん、」 「嫌い…、」 「わかった」 また優しくあたしの頭を撫でた土方は笑っていた。嫌い、と言ったあたしは泣いていて。 涙は拭っても拭っても零れてきて。 「ごめん、なさい…ッ」 もう、この人と一緒に居たらいけないんだと思った。 (好きだ、という気持ちを押し殺す事に決めた) 2011/0818 ← |