「あの神威さんと、ドS女王付き合ったらしいよ」

「ああ、沖田さんね。あんなに神威さんを毛嫌いしてたのに意外だよね」

「ねー」



どこからともなく耳に入った会話。ばっかじゃねえの。なんにも分かってねえ。あいつはあの神威を最初から毛嫌いなんかしてねえよ。
素直になれねえから、キモいとか口走るだけで本心からじゃねえってなんでわかんねえのかな。俺にあいつの事を話す総羅の顔はどこか嬉嬉していて。
はあー。ため息を一つ零して窓の外を見つめる。



「早く別れちまえばいいのに」



思わず口走ったこれが俺の唯一の本心。
あいつが神威の事をべらべら話す度に適当に相槌をうって、適当にアドバイスして、なのにあいつらはくっついて。本当おかしな世の中だと思う。
俺のほうがずっとあいつと過ごしてきたのに。俺のほうがずっとあいつを知ってるのに。俺のほうがずっと。俺のほうが、



俺のほうがずっとあいつを好きなのに。



今更嘆いても醜いだけなのに。ああ、あいつの幸せを喜べないだけで十分醜いか。
誰か俺を思いっきり殴ってくれないかな。チクチクするこの胸の痛みすら忘れられるぐらいボコボコにしてくれよ。また、ため息を零しながら突っ伏す。泣きたくなってきた。結構一途なのにな、俺。あいつを幸せにできるのはきっとこの世で俺だけ、だなんて随分馬鹿げた事を考えていたと思う。
じわり、ああ情けない。目頭が熱くなってきた。



ブラックアウト
(全部、全部、忘れてしまいたい)




2011/05.01



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