坂田×初期沖田→土方

※ベロちゅーだけですが、一応注意。




「ねえ、」



後ろから聞こえた声に俺は振り返らず、なに、と呟く。5歩程後ろに居る少女の声はあまりにも小さくて。この場が少しでも賑やかだったら聞き取れないくらいだ。それでも少女はお構いなしに話を続ける。



「なんで」

「なにが?」

「………」



主語がなく疑問だけぶつけられても分かるはずなんてないのに、俺には少女がその先に言うはずの言葉を理解できる。
やっぱりなんでもない、と言った声はあまりにも悲しそうな声で。その続きの言葉を俺は咎める事なく興味なさそうに演じ、ふーんと返す。



「なんで」

「え?」



少女と同じ様に今度は俺が口に出した。それと同時に歩みを止める。すると5歩程離れた少女もぴたりと歩みを止めた。
そしてくるりと振り返り、少女の目を見てみてもそれが交わる事はない。
(あーあ、)



「なんで俺じゃないの」



ぴくり。少女の肩が小さく揺れた。ゆっくりと一歩近寄れば、少女も同じ様に一歩下がる。そういう無意識な行為がすごいむかつく。



「なんで俺と居るの?」



また質問を投げかけると同時に一歩近づく。少女は質問に答える事なくまた一歩下がった。目は左右に泳いでいて、ああ可笑しい。

可笑しいのに、悲しい。



「なんで土方君なの?」



ダン、少女の顔の真横を掌でたたきつる。意外にも鈍く乾いた音が響いた。壁に追い詰めて、もう逃げ場なんてないのに少女は必死に逃げ場を探す。やっぱり視線は交わらない。
答えてよ、と催促すれば少女の口は少しだけ開いた。でも声が出る事はなくて。何か言いたくても喉で止まって飲み込まれてしまうのだろう。

こんなに土方君と俺は似てるのに、どうしてこの子は俺じゃ駄目なんだろうか。ならどうしてこの子は俺と一緒に歩いてるのだろうか。嗚呼、無性に悲しくなってきた。

分かってたさ。総羅が俺と肩を並べて歩かない事くらい。分かってた。どんなに俺と土方君が似ていても結局同じにはなれない事くらい。利用されるだけでもいいって最初は思ってたのに、やっぱり俺を見てほしいと思った。きっと一緒に居れば俺に惹かれてくれるって思ってた。でも少女はかなりの一途らしく、全く靡かなかった。悔しいなコノヤロー。

噛み付く様なキスを総羅に浴びせれば、最初はキスを拒んでいた総羅も諦めたのか必死に舌を絡めようとする。それでも俺の心は満たされなかった。



「ねえ、俺の事好き?」



返事をしない少女にもう一度激しいキスを。

嗚呼、このまま一緒に、


窒息死
(一緒に死ねたらどんなに幸福か)





2011/05.01


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