鈴様キリリク

神威×初期沖田




「総羅ー、今度いつ会えるかわかんなくなっちゃったヨ」

「…ふーん」



どしゃどしゃと雨が降ってる中、傘も差さずにやって来たみつあみの男。頬杖をついて興味なさそうに返事すれば、反応薄いよと一言。

一応言っとくがあたし達は別に恋人同士ではない。でもストーカー紛いな事はされていた。だからこちらからしたら正直好都合だった。だってこれで変な奴に付き纏われる事はないんだからさ。

でも彼の言い方があたしの癪に障った。まるであたしも神威に会えないと寂しいみたいな言い方で。
勝手にあたしに会いにきてる奴がよく言うわ、なんて思いながら視線を神威に向けた。



「ねえ、寂しい?」



彼の形の良い唇が動いた。あまりにも直球な質問で面食らう。
寂しいって、そんなの言わずとしても分かる事じゃないか。小さく鼻で笑いきっぱり言い放つ。



「別に?」

「へー」



聞いてきたわりに随分と興味なさそうな返事を頂き、少し苛立つ。その質問をした意図はなんなんだよ。そんなあたしの気持ちを彼は知ってか知らずか、また口を開く。
弾んだ声が響いた。



「そのわりには随分寂しそうな顔してるネ?」

「は?」



寂しそう?自惚れるのも大概にしてほしい。ドッドッと速くなる鼓動はけして図星だから、なんて事ではなく驚いたからだ。きっとそう。
ああ面白い事を言うもんだ、と思いっきり笑ってやろう。そう思っても出るのは乾いた笑いだけ。耐え切れなくなり下を向いたら水溜まりが見えた。それに反射して写る自分。なにこれ。なんであたし、



「泣きそうな顔してんの?」



声と顔が一致しなかった。自分の顔は眉が下がり随分と悲しそうな顔をしてるのに声にそれは現れず、普段通りの声。
動揺してるあたしを余所に、隣から聞こえるのはヘラヘラとした笑い声。なんなの本当に。



「もうとっくに惚れちゃってたんだよ、俺に」

「は…?」

「俺の事好きでしょ?」



否定の言葉を述べようとしても、喉まで出かかった言葉はすぐに飲み込まれる。
ああ畜生、なんて事気づかせるんだこの野郎。急激に集まる熱を何処に逃がそうか考える。出来れば目の前のこいつにバレないように…、と。でもその行為はすぐに無駄になった。



「顔赤いよ?」

「てめ、」



くい、と手で顎を掴まれ顔を上げさせられた。真っ赤な顔を直に見られたあたしは抵抗しようと手を振り上げるも、奴の空いてる片手で両手を一くくりにされる。
離せと言うが早いか、奴に唇を塞がれるのが早いか。
ゆっくり離れる唇に名残惜しさを感じるあたしは余程こいつに惚れ込んでるからなのかは分からない。そんなに惚れ込んでたのならもっと早く気づいてもいいのに、何故こんなに気づくのが遅くなったのかを考えればつくづく自分の鈍感さに呆れた。



「あはは、総羅顔真っ赤!」

「…うるさい!」



いいものが見れたよ、と楽しそうな声が耳に入る。自分だけこんなに振り回されて、そう考えるとあまりいい気分ではない。
だから神威の胸ぐらを思いっきり掴んでこっちに寄せた。また重なる唇。でもすぐに引き離してやる。
そっと視線を神威に向けたら呆気に取られたような顔。お返しだよ、なんて言わんばかりに見つめてやれば少し頬が赤く染まった神威と視線が交わった。



「へー、大胆だネ」

「そう?」

「でもまあ、満足したよ」



そう言ってあたしに背中を向け歩き出す神威。どこ行くんだ、という疑問より先に、ある言葉が脳裏に浮かんだ。

"総羅ー、今度いつ会えるかわかんなくなっちゃったヨ"

遠くなる背中を傘も差さずに追いかけた。すぐに追いかけたからか、神威からそんなに距離はなくすぐに追いつく事ができた。
荒々しく奴の腕を掴めば、驚いた神威の顔。



「どうしたの?」

「いつ来るの?」

「え?」

「だから今度いつ来るんだよ…」



情けない声が出た。寂しい、と素直に口に出来ないあたしはなんて可愛くないんだろう。
思わず俯いてしまったら上から小さな笑い声。



「ついてこない?俺に」





(差し出された掌をあたしは迷わず握り返した)






2011/04.18
リクエストありがとうございました。


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