あんだけ、大口叩いといて素直になれないのは土方でもなんでもない。あたしだ。



「素直ならさ、無理してあたしと一緒に居ようとしないでよ」



馬鹿みたい。全部理由を土方にこじつけて。違うんだよ、無理して土方と一緒に居たのは他でもない。

このあたしなんだ。

それは嫌いだから、殺したいから、とかそんなあまっちょろい理由なんかじゃなくて。
彼があたしに視線を向ける時にたまに違和感を感じていた。
でもだんだんそれが繰り返されていくうちに、確信に変わって。
あいつはあたしと姉上を重ねてる。
何でそんなのが分かるのかって、長年一緒にいたら表情一つで何を考えてるのか分かる。もうあたし達はそんな仲なんだ。
とにかくその事実に気付いた時、苦しくて。本当はそんなの気づきたくなんてなかった。
だからこそ弱いあたしは、理由を全て土方に押し付けて、自ら彼から離れた。

本当は大っ嫌いの筈だった。あたしの大切な人全て掻っ攫って。本当にいなくなれ、と本気で思ってて、よく呪いの儀式をしていたのを思い出すと笑えてくる。
でも一緒に居ると、だんだん姉上がこいつに惚れた理由が嫌でも分かってきて。悔しいけど、あたしもどうしようないくらいあいつ惹かれちゃって。その事実が嫌で、素直になれなくて、何度あいつに嫌がらせをしたか。
でも異変を気づかれたら駄目だから、何が起きてもいつも通り接するつもりだった。
土方が大怪我して帰ってきた時本当は、泣いて縋り付きたかった。よかった、って。無理すんな、って。
なのにあたしは、そのまま死ねばいいのに、なんて思ってもない憎まれ口叩いて。そんなあたしに土方は小さく笑うだけで、洒落にならない冗談でも責める事はなかった。
優し過ぎるところとか、あたしにだけ少しだけ甘いところとか、変な味覚してるところとか、不器用なところとか、全部好きになって。



「畜生…、」



あの時、追い掛けて来てくれるんじゃないかって、期待したあたしが馬鹿だった。
土方が好きなのは、あたしじゃなくて姉上。それは理解出来てた筈なのに。
やっぱり、惹かれた人に自らさよならを告げて平気でいられる程あたしは強くない。
強いのなんて見かけだけで、案外あたしは弱いと思う。たかがフラれただけで、涙が止まらないなんて。こんな経験無いに等しいからきっと、初めてだからきっと、こんなに涙が止まらないんだよね。

絶対"土方"だからって訳じゃないよね。



「…何で追い掛けて来ないんだよ馬鹿土方、」



自分から離れたのに何言ってんだかね。わがままもここまでくると呆れるよね。
でも形だけでもいいから、そこに気持ちなんてなくていいから、追い掛けて来てほしかったなんて、あたしは本当どうかしてるよ。




(きっとこのまま交わる事はない)




2011/02.26




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