沖田←神楽



いつもの様にだ。いつもの様に、近くにいた私の想い人の妹に喧嘩を売って、騒いでいた時だ。
先ほどまでクラスに居なかった筈のあいつが、教室のドアを開けて入ってきた。そいつを目で追っていたら交わる視線、自然と赤くなる頬、うるさく鳴る心臓。もうこの想いの止め方なんて私には分からない。



「おいチャイナ、赤くなってやすぜ」



ニヤニヤと隣から話す声は総羅。私の喧嘩相手でもあり、一番の友達といっても過言ではないくらい。
そんな関係の彼女が私の気持ちを知らない筈なくて。
ゆっくり近づいてくるあいつの足音と同時に私の心臓はうるさく鳴る。



「ほらきやしたぜ、邪魔者は退散しまさァ」

「なっ…!ちょっと総羅!」



そう言って彼女は言葉通り私の隣から消えた。それとほぼ同時に目の前にやって来た想い人。そいつの頬はほのかに赤く染まっていて。
初めて見る表情に私もそいつと同じ様に頬を染める。



「…お前に言うのは俺の癪に障るけど仕方ねェ、」

「なんだヨ、サド。さっさと話すネ」

「お前、女心っつーのわかる?」



あまりにも予想外の言葉がサドの口から出たもので、私は思わず吹き出してしまった。
こいつが、女心を知りたいなんて。どんな風のふきまわしだか。



「あ、テメ!笑ってんじゃねぇよ!」

「だってお前が、女心って!何かあったアルか?」



まだ笑いがおさまらない私に、彼は俯く。いつもと様子の違う奴に私の笑いはピタリと止まり、どうしたネなんて言えば彼は、あーとかうーとか言葉になってない声を上げる。
やっと覚悟を決めたのか、顔を上げた彼の表情は驚くほど真っ赤で、私の思考は嫌な方向へ向かった。



「俺、"恋"ってのをしたみたいなんでさァ」

「…まじでか、」



サーっと先ほどまでの上昇した体温は一気に下がり、手には汗が滲む。
この先の言葉を聞きたくない、と叫ぶ心の声はやっぱり彼には届かず、口を閉ざす事のないサドに私の頭はついていけない。



「だから、お前に女心ってのを聞きたいんでィ」



総羅に女って単語は禁句だからって続ける彼に言葉が出なかった。
やっと追い付いた頭でよく考えてみれば、どうやら私は失恋したみたいで。その事実に気づいた時には私の胸はズキズキと痛んで、どうしようもなかった。



「はっ、そんな事アルか!全部この工場長の私に任せるネ!お前は黙ってその子を想ってればいいのヨ!」

「言い方が、気にくわねえけど。まあお礼だけは言っときやす!ありがとねィ」



そんなに笑顔になられたら、もう私は沖田の野郎を応援するしかなくて。
ずるい、ずるいよ。私はこんなに想ってるのに、サドは私じゃなく違う誰かを想っていて。
こんなに私を本気にさせといてそれはないよね。神様って本当ひどい。
私が涙を流すまで、もう時間はない。さっさとこいつから離れなければ。



「まあ私が協力してやるんだから百人力アル。安心してさっさとどっか行くネ!お前を見てると不愉快ヨ」

「あんまり調子にのんなよクソチャイナ!」



いつもの様に突っ掛かってくるサドに、今の私は残念だけど相手にする気力がない。くるりと奴に背を向ければ溢れでる涙。
悔しい、本当に大好きなのに。なんで私じゃないのって。
教室にそのままいれるほど私は強くない。廊下に出ればよってくる栗色の髪のあの子。



「チャイナ…、」

「そう、ら。私強いよね、目の前で好きな人が違う女の子の話して…、」

「しかも協力するなんて言えて、」



どんどん溢れる涙。もう辛い。頭も心もパンクしそう。
いっぱいいっぱいの私を総羅は強く抱きしめた。私と同じ様に涙を流して。
私を本気で応援してくれた総羅に申し訳なくて。らしくもなくゴメンと呟く私に総羅はまた腕に力を入れた。



「あんたは強いよ、よく頑張りやした」



あまりにも優しい声で言うもんだから、涙がもっと溢れて嗚咽を止める事が出来なかった。



んよ
(なんで気づかないのかな。)




2011/02.12
前に沖田←神楽がみたいという意見があったので。







 
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