あの日から土方とは話をしてない。土方に会ってもあたしは目も合わせないからだけど。学校に行ってもその日一日サボってたり、色々やってるからね。
そりゃ、やっぱり土方の側に居たい。でも無理なんだよ。土方の隣はあの子。あたしが付け入る隙なんてありゃしない。深くため息を吐いた。


「土方くん」


ざわざわと騒がしいクラスの中、土方を呼ぶ声をピンポイントに拾ってしまう自分の耳が嫌になる。横目で声のする方をみてみれば、土方と恥ずかしそうに話すあの子。いいですね、幸せそうで。
すっかりあたしの心は更に黒くなってしまって。でもやっぱり苦しくて、すぐに目を逸らした。


「…総羅が、」

「うん…」


あたしの名前が土方の口から出た時、心臓がうるさくなった。馬鹿じゃないの、彼氏が他の女の名前なんかだしたら不安になるのは当たり前の事なのに。
しっかり奴らの話を聞いてる自分が嫌になり、教室から出た。
こちらを見つめる二つの視線には気づいていたけど、無視した。おめでとう、なんて今は言えそうにない。


「おい総羅」


つくづく土方の乙女心の分からなさに呆れる。彼女ほったらかしにしてくんなよ。
どうせ無意識なんだろうけど、あたしを選んでくれたのかと勝手に思って、嬉しかった。これが素直な感想。でもあいにくあたしは素直な子じゃない。口から出る言葉は、思ってもない事ばっかだった。


「…彼女、いいの?」

「お前何で俺を避けるんだよ」

「ほら、彼女出来たのにあたしが土方の隣に居たら、彼女ヤキモチやいちまうだろィ?だからでさァ」

「じゃあ何で泣いてたんだよ」


そんなの言える訳ないじゃん。必死にそれっぽい理由を考えても、思い付かなくて。何も言わないあたしを土方はやっぱり悲しそうな顔で見ていた。


「俺、総羅に隠し事なんてしたことねえ」

「あたしだって…!」

「してんじゃねえか!!俺は総羅に何かしたか!?そんなに俺は信用ねえの?」

「言えねえから黙ってんじゃねえか!!言ったら土方さんを困らせる…!だから言えねえんだよ!」


それぐらいわかってよ…、最後は自分でもびっくりするぐらい弱々しい声で呟いた。
唇を噛み締める土方はまだ言いたい事があるみたいだった。だけど言えないのはきっとあたしがまた涙を流したから。
ごめん、とまた謝ってから土方はあたしから離れた。謝らなきゃいけないのはあたしのはずなのに、どうしても言葉がでなくて。この時確信した。

あたしはもう土方と一緒に居ちゃいけない。

もう随分土方を困らせた。ああやって声を張り上げる時は自分に余裕がないとき。あいつは優しいからきっとあたしの事を考えていてくれたんだ。だから今度はあたしが、土方の事を考えて距離を置く番。あいつはあたしと違って、あたしに依存してる訳じゃないから、時間さえたてばあたしを忘れられると思う。
きっと土方を忘れるなんて、初めて本気で好きになった人だから。ずっと忘れるなんて無理だけど、気持ちを押し殺す事ぐらいできる。

もういいんだ。土方には笑っていてほしいから。幸せになってほしいから。悔しいけどあたしには土方を笑顔にする事なんて出来ない。だから後は任せたよって、あの子にお願いしなきゃね。



さよなら。ずっと、これからも大好きな人。





(これでいいんだ。)




2011/02.05
どシリアスな話を書きたかった。
お題は全て確かに恋だった様からお借りしました。








 
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