今日は土方が頑張る日。まあ、告白をする日。場所なんて聞いてない。どんな内容かも聞いてない。でも今あたしは土方よりそわそわしてるんじゃないだろうか。
今すぐにできれば告白を邪魔しに行きたい。でも今まであたしが土方の言葉一つで色んな感情が現れるように、あの子の行動一つで土方は落ち込んだり、喜んだりしていた。それを全部見てきたあたしには、邪魔なんて出来ない。
出来ないから苦しいんだよ。
放課後、あたしは告白の結果を聞く為に教室でずっと待ってた。
失恋しろ、だなんてやっぱり心では願ってて、つくづく自分の性格の悪さが嫌になる。


「はあー」


深くため息をついて、気持ちを落ち着かせる為に屋上行くかー、なんて思った。
それが間違いだったなんてね。

────……


乱暴に屋上の扉を開け、フェンスに近付き寄り掛かる。
空が綺麗だなー、なんてくだらない事思ってたら、遠くで話し声。特にやる事もないし、なにかしていないと不安で押し潰されそうだったあたしは声がする方向に向かった。軽い悪戯のつもりだった。盗み聞きしてやろうって。
相手に気づかれないかなとか、スリルがあってドキドキした。近づいていけば、段々声もはっきり聞こえてきて、その声が聞き覚えのある声だって気づくまでに時間はかからなかった。


「…前に見た時から、」


足がぴたりと止まった。聞きたくないのに、身体は動かなくて。何でこんなに運が悪いんだろう。


「私も好きだった…」


あたしの思考は止まった。女の子が恥ずかしそうに下を向いて、土方もそれにつられて頬を染める。それがあまりにも初々しくて。この場所にあたしは居たらいけないんじゃないかと思うくらい。
よかったね、土方。両想いになれて。涙が止まらなかった。早足で屋上から出て、教室に何事もなかったように戻る。きっと戻って来るのにまだ時間はかかるだろうからなんて理由をつけて、声を上げて泣いた。嗚咽が止まらなかった。胸が苦しくて、辛くて。
土方の幸せそうな顔を見たら、あたし平常心を保てる自信なんてない。もう、帰ろう。
机の横にかけてあった鞄をひったくった。いつも隣に居たあの人はもうこれからあたしの隣にはいないんだ。それを考えるだけで、更に涙は溢れる。一番慰めて欲しい人はもういない。

土方にさえ見られなければいいや、って。涙は流したまま廊下に出た。


「総羅…?」


ああ最悪だ。1番逢いたくない奴の声がして。もう聞こえないフリしてさっさと帰ろうとしても腕を掴まれたらなす術もなくなる。


「何で泣いてんだよ…」

「うるさいよ、もう帰るんだよあたしは」

「…何があった?総羅?」


もう優しくしないでよ。もうあたしの名前を呼ばないでよ。ダメなんだよ。もう泣き止む方法なんて分からないんだよ。

あんたが、好きなんだよ。


「そう、」

「もうほっといてよ!!あたしに構わないで下せェ!あんたと居ると辛い…っ」


その時の土方の表情は酷く悲しそうで、違うんだよ。本当は土方のせいじゃない。全部悪いのはあたし。
ごめんな、ってあんたは悪くもないのに謝る。謝らなきゃいけないのはあたしで。でも後ろから不安げに土方を呼ぶ声が聞こえた。あの子の声に反応して、腕を掴む力が緩んだ隙に、あたしはそれを振り払って早足でその場を去った。
おいかけてきてくれる訳なんてなくて。
初恋はやっぱり実らないんだな、ってくだらない事考えた。




(あたしにも少しは可能性はあった?)



2011/02.05





 
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