「お前さ、最近俺の事避けてるよな?」


急に腕を掴まれ、いつものようにサボってやろうとしたらこんな事言われた。ふざけんな、人の気持ちには気づかねえ癖に、こういう事には敏感なのかよ。
そんな事ねえよ、なんて口では言うものの土方の目を見て言えなかった。


「じゃあ何で目見て言わねえんだよ」


案の定的確な事を言い返され、言葉に詰まる。じゃあさ、もしも土方はあたしが好きだって言ったら答えてくれるの?どうせ下を向いてごめん、って言うんでしょ?あんたの事は1番あたしが理解してるつもり。どんな反応されるかなんて目に見えて分かるんだよ。
心では言い返してるのに、口に出せない。


「そんな事より、あの子とはどうなんだよ」


あたしの口から出た言葉は世界で1番聞きたくない事。でもほら、効果は抜群みたいで。頬を少しだけ赤く染めて、目を泳がせる土方を見たらもういいやって思えた。
笑えないのに、からかうように笑顔を作って、どうなんだよと追い撃ちをかければ口を吃らせる。


「なに?何か進展あったんですかィ?」

「今はお前の事を…!」

「あたし今質問してるんですけど」


先ほどまで土方にあった主導権は、もうあたしにうつった。こうやって言いくるめちまえばもうこっちのもん。もうあたしの事はどうでもいいのか、綺麗に話題は変わった。
話題を変えたのはあたしなのに、もうちょっとあたしの事を気にしてくれても、なんてわがままな思考を脳内に押し込めた。


「…告白しようと思ってる」


土方の口から出た言葉はあまりにも予想外で。でも心のどこかではこうなる事を分かってたはずなのに、心臓は早く脈打つ。
辛い、苦しい、あたしの心はもうレッドカードを出していた。でもそんなの無視して、またあたしは笑顔を作る。


「成功する事祈ってやす!」

「おう…、ありがとな」


照れ臭そうに笑う土方にまた胸が締め付けられる。本当こいつにあたし感情をコントロールされすぎだろ、なんて思うと小さく笑ってしまった。
成功する事祈るだなんて、あたしも平気で嘘つけるようになったよな。応援なんて口だけで、心では全然してないのに。


「まあ、フラれたら慰めてやるから安心しなせェ」

「…縁起でもねえ事言うんじゃねえよ!」

「でも土方さんなら大丈夫」


あたしが惚れた男だから。なんて心で言いながら笑ってみる。あたしにつられてか、土方も小さくだけど笑った。それがむしょうに苦しくて、この場で声を上げて泣きたくなった。


「…総羅に言われたら心強いな」

「あんたはまたそうやって、」

「なんだよ?」

「なんでもねえよ」


心強い、素直に嬉しかった。何だか特別扱いされたみたいで。それはあたしの勝手な思い込みなのは分かってるけどさ。あたし単純だから。土方の言葉一つで笑ったり、泣いたり、簡単に出来る。惚れた者負けってこういうのを言うんだと思う。


「誰よりもあんたの事を理解してるあたしからの最後のアドバイスでさァ」

「なんだよ」

「プライドなんて捨てて、素直に自分の気持ちを伝えろよ!好きでいれば相手も好きになってくれるなんて大間違いだからねィ!伝えなきゃ、相手には分からないんだから」


言いながら泣きそうになった。土方に話をしてるフリして、自分に言い聞かせた。伝えなきゃ相手には分からない。だから、あたしの気持ちは土方に何一つ伝わらなかった。それでもいい。

それがいいんだ。土方を困らせたくなんかないから。

なんだよいきなり、なんて言う土方にそういう事だから。と言ってまたあたしは、泣きに一人になれる場所へ向かう。
ごめん、あたし土方がすごい好きだからさ。


り、
(あたしも素直になってみたかった。)




2011/02.05




 
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