これの続き。


しばらく固まっていた二人。先に口を開いたのは神威だった。


「嘘だ、そんな話聞いてないヨ」

「当たり前だろ、うぐえ!」


嘘なんだから、と続けようとする土方の鳩尾を遠慮なく殴る。うずくまる奴に目もくれず、あたしはそんな話してないもん、と神威に追い撃ちをかけた。


「…こんなののどこがいいの?」

「少なくともあんたよりはマシでさァ」


これは本心。ストーカーなんかに心を開く訳がない。やっぱりここでも笑顔を忘れずに、言い放つ。これであたしはもうストーカー被害には合わないだろう。そう確信したはずだった。


「ねえ、略奪愛って知ってる?そういう恋の方が燃えるよネ」


何を言ってるんだこいつは。それでもあたしの思考回路を悪い方に向けさせるには十分すぎる発言で。もう嫌な予感しかしないあたし。手には汗が滲んだ。


「彼氏とか俺には関係ないの」

「……」


言葉が出なかった。もうこれは確実に土方だけが迷惑をする展開。現に土方は神威に睨みつけられている。
ごめん、土方コノヤロー。やっちまった。神威をナメてたよ。
頭の中で土方に謝罪し、適当に神威の言葉に相槌をうつ。
意識を隣に向ければ、痛いほど鋭い視線を向けられてる気がする。横目で土方を見るとばちりと視線が交わった。


「おい総羅、」

「うん、分かってまさァ」

「だったらこの状況どうにかしろ」

「ごめんなせェ、そりゃ無理な話でさァ」


土方はどうやら言いたい事がたくさんあるらしく、いきなりあたしの腕を引き神威から距離をとった。不思議そうに見つめる神威の視線がやけに痛かった。


「おい、てめえなんて事してくれるんだ!もうあいつは俺を敵として見てるからね、めんどくさいよこれはかなり」

「すいやせん、うまくいくと思ったんですが、」

「どうすんだよ」

「月9みたいにあたしをとり合って下せェ」

「ふざけんなァァ!!あんな殺人兵器並に危ねぇ野郎と殺りあえってか!」

「土方も死ぬし、神威も運がよけりゃァ消える!あたしには一石二鳥でさァ」


真剣にそういえば、頭をおもいっきり殴られた。あたしも同じ事言われたら蹴ってたけど。まあいい。この状況ちょっと楽しかったんだけど、終止符を打ってやるか。かったるそうに欠伸をするあたしに不安げな視線を向ける土方。まあまあ、見てなせェ。


「もうあんたには迷惑はかけやせん、ちと刺激が強すぎるかもしれやせんがまあ気にすんな」

「なに言って、」


小さく笑ってから、神威に近づいていくあたし。土方より背が低い神威の胸ぐらを思いっきり掴んでやる。そして、そのまま引き寄せた。


「!?」


呆然としてる土方。されるがままの神威。あー面白い。たかがキスしたぐらいでその反応。
奴から唇を離し、微笑んでから一言。


「おいストーカー、あんたと付き合ってやるよ。せいぜいあたしの気持ち掴んでおくことですねィ」

「え…、」


いきなりで頭がついていかないのか、マヌケな声を出す神威に笑いをこらえるのに必死なあたし。
もう土方なんて茅の外だった。



(みんなみんなあたしに溺れればいい。)



2011/02.02
小悪魔な総羅ちゃんを書きたかっただけ。









 
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