「ごめんチェレン、俺Nの事好きになったかも」


否定してたはずの感情だったのに。
なんで俺はチェレンにこんな事を言ったのか、なんて分からない。
その時のチェレンは、ひどく悲しそうな顔をしていて俺は何度も心の中で彼に謝った。
責められるかと思っていたけどチェレンは俺を全然責めなくて、挙げ句のはて宣戦布告までしてきた。
きっとそれは彼なりの優しさなのだろう、俺はチェレンに聞こえるかなんて分からないくらいの声でありがとうと呟いた。
(チェレンの反応からしてきっと聞こえてないんだろうけど)


「また僕は仲間外れかい?」

一人で食事をしているNのもとへ戻った俺ら。
そしたら彼はムスッとした表情をしていた。
また、というのはきっと教室で俺がチェレンを連れていった時の事を言ってるんだろう。
感情に素直なNに俺の顔は綻んだ。


「寂しかった?」

「…寂しくないと言ったら嘘になっちゃうけど」


小さく笑ってしまった。
それをNは見逃さず、なんで笑ってるのと俺に言った。
ふふ、隣からまた笑い声が聞こえた。


「チェレン君まで!」

「ごめん、Nが可愛かったから」

「なんなんだよ!」


可愛いと言われたのが気に入らないのか、ご機嫌斜めのN。
そんな彼にまた笑いが込み上げてきたけど、今度こそ堪える。
(きっとまた笑ったらNの機嫌は治らないであろうから)


────……


あれからしばらく談笑していたら、チャイムが鳴った。俺らはそれぞれの席に戻り、つまらない授業をひたすら聞いていた。
(まぁ俺はほとんど寝てたけど)
そして気づいたら、下校の時間。
部活に行く奴や、そのままいそいそと帰る奴。俺はもちろん後者。部活とか面倒なだけだし、さっさと帰って寝てた方がマシだ。


「トウヤ、朝話したように僕ら先に帰るね」

そう言ったチェレンの隣には、にこにこと気分が良さそうなN。心なしか、チェレンも嬉しそうだった。
そりゃそうか、彼はNに好意をもってるんだから。一緒に帰れて嬉しくないはずないんだ。


「…わかった」


俺がそう言えば、じゃあね、と遠くなる二人の背中。
その背中をじっと見てたら、何故かすごく孤独になったような気分になった。


「おれもさっさと帰るか…」


誰もいない教室で、夕日で赤く染まった景色を眺めながら、机の横にかけてある鞄を俺は引ったくった。



(別に寂しくなんかない)


2010/11.01






 
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