今日は総羅と見回りがある俺。
あいつは隙あればサボろうと何処かに行きやがる。俺はあいつが逃げないか、ばっかに気を使ってしまって見回りどころじゃなくなるのだ。
ため息を一つ零し、布団から起き上がる。どうせまだ寝てるだろう総羅を起こしに行くためだ。
「おはようございます」
「…何で居んのお前」
起こしに行こうとした相手が当たり前の様に俺の部屋で、煎餅を食べていた。
あんたが寝坊しないか起こしに来た、と目も合わせず言い放つ。寝坊が当たり前の総羅に、頭がついていけない。
今目の前で起こってる事が事実なのかと自分の頬を抓ってみるも、痛みを感じる。これは事実なんだ、と確信した。
「お、お前今日何かあんのか?」
「はぁ?見回りがあるでしょ。わざわざあんたを迎えに来てやったんですよ、ミス方さん」
「ミス方って何だァァ!お前まだこの間の引きずってたのか!甘味奢ってやったんだからチャラにしろよ!」
「自分のミスをなかった事にしようなんてさすが副長。権力者って怖いわー。ミスゴロウさん」
「なんだよミスゴロウって。いちいち変えてんじゃねーよ」
「もううるさいよ。ムツゴロウさん」
「誰がムツゴロウだコラ!つーかてめぇさっきから煎餅ボロボロ落ちてんだよ!!ふざけんなよ誰の部屋だと思ってんだ!!」
さっさと出てけ、と続けて言えば総羅は舌打ちをしてから、零れた煎餅を片付けもせず、荒々しく襖を閉めて出て行った。
朝から随分と騒がしかったな、なんて思いながら着流しに手をかけた。
─────……
「いいですねィ、総羅と一緒に見回りが出来て」
さっさと見回りして帰って来ようと早めに玄関に向かってた時、ドス黒いオーラを放ちながら、こちらを睨みつける総悟に出くわした。言わずとも奴は怒りに満ち溢れてるようだ。
総羅と見回りの度にこいつはこんな不機嫌になるのかと思ったら頭が痛くなってきた。さてこいつからどう逃げようかと考えていたところ、遠くから総悟を呼ぶ高い声。
男だらけでむさ苦しい奴らの中、こんな声を出せるのは一人しかいない。
「総羅!」
「今土方のマヨネーズの中に絵の具混ぜてきやした!」
「おぉ、良くやりやしたね。団子奢ってやりまさァ」
「やったー!」
頭を撫でる総悟に、撫でられてうれしそうにしてる総羅。
此処だけ見てたらすごく微笑ましいのかもしれない。
「テメッ、俺のマヨネーズになんて事してくれんだァァ!」
「あ、居たんですかィ」
「さっきから目の前に居ただろ。お前の視野どうなってんだよ!」
「土方なんかは眼中にないんで仕方ないでさァ」
「何こいつ本当にムカつくんだけど」
それはこっちの台詞でさァ、といつまでも悪態をつく総羅を一睨みしたところで、またドス黒いオーラを感じた。
誰がそんなオーラを出してるのかとすぐに理解した俺は、総羅の手を取ってすぐに屯所から出た。
少しでも総悟から離れたかった。あんなのと一緒に居たらストレスかなんかでハゲちまいそうだ。
「いだだだ、ちょ、いきなりなんすか」
「あ、悪ィ」
「何かあったんですかィ?」
「いや…、つーかお前の兄ちゃんどうにかしてくんね?」
「総悟が何…?」
一気に周りの空気が変わった。総悟も総悟だが、こいつもこいつで兄貴が相当好きらしい。
総悟を悪く言ったら殴りかかってきそうな勢いだった。もういいです、なんてこいつに訳分からない敬語なんて使っちまって。
「よく分かりやせんが、さっさと見回り終わらして遊びに行きやしょうよ」
「遊びにって…、お前仕事をなんだと思ってんだ」
「どうせ平和なんだから平気でしょうや」
瞬間、大きな爆発音。周りからは叫び声。もくもくと上がる煙り。
何が起こったのか一目でわかる。爆破テロだ。
「平和じゃねェみたいだが」
「…これはイリュージョンでさァ、さっさと帰りやしょう」
「どんなイリュージョンだよ!つーかテメッ、逃げようとしてんじゃねェよ!」
「もう暴れるだけ暴れさせやしょうや」
「もう十分暴れてるじゃねェか!!」
嫌がる総羅を無理矢理引きずり、爆破が起こった場所まで連れて行く。
この間みたいに刀を忘れてないかみたが、しっかりそれは腰に掛かってた。
「はぁ、さっさと終わらせやしょう」
「応援はいらねぇか?」
「いらねェよ、呼ぶ時間が無駄でィ」
ゆっくり刀を鞘から抜く彼女の目は鋭くなっていた。
暴走まで3、2、1
(脳裏に焼き付いてる彼女が浮かんだ)
2011/03.22
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