気がつけば周りは飲んだくれて寝てる隊士。全裸の近藤さん。未成年なのにもかかわらず酔っ払い、酒の瓶を持ちながら寝息を立てる総悟。
全てが見慣れた世界の中、その中で見覚えのないものが一つ。
この中に少女がいるということだ。
でも何故かその少女は周りに驚くほど溶け込んでいて。
そして俺の肩に少女は頭を預けて寝息を立てている。そうなりゃ、俺も動けない訳で。


(さて、どうするか)


今日一日いろんな事があって疲れたんだろう。起こすのは何故か気が引けた。
歓迎会はその名の通り、少女を隊士の奴らが本当に歓迎をしていて。でも、総羅が皆の前に出た時の奴らの驚いた顔は笑いもんだった。

総羅を隊士の大半の奴らが男だと思っていたのだろう。

それで、いきなり来て自分等の上に立つのが女だと、それも少女だと知れば良く思わない奴も中にはいるもんで。でも総羅の苗字を聞けば、奴らは何も言葉を発しなかった。
沖田。総悟がどれほど隊士に信頼されていたかがよくわかる。
それに、総羅が隊士の奴らに自信あり気に言い放った言葉。

"女だからってナメてんと、痛い目みやすぜ"

その後に、相手になって欲しい奴がいればいつでも相手にするから、と微笑んだ。
あの言葉に凄まじい殺気が含まれていたのが、決定打。
もう奴らはあのじゃじゃ馬姫に振り回され続けるのだ。


「このやろー!」


急に痛む俺の頬。ゆらりと揺れる一つの影。隣から消えた温もり。
俺はどうやら総羅に殴られたみたいだ。予想外すぎて、一瞬呆気に取られたがすぐに何をされたか理解が出来て。怒鳴らずにはいられなかった。


「テメェなにすんだ!」

「土方このやろー、死ねこのやろー!」

「お前、酔っ払ってるな!」


未成年なのに何やってんだ、と怒鳴っても、もう総羅の耳には届かない。
ゆるゆるとした攻撃がひたすら、少し赤く頬を染めた少女から繰り出される。
もう交わすのも面倒で、両手首を掴めば攻撃手段をなくしたのか、頭突こうとしてくる。
ちょっと待て、顔近い。


「だあああ!もうやめろ!いい加減にしやがれ!」

「あっれー?なんか顔赤いぞ土方ァー。なんで照れてんのー?」


お前のせいだ!と喉まで出かかった言葉を飲み込む。
こっちはもういっぱいいっぱいでどうにかなりそうなのに、彼女は違う様で。クスクスと無邪気に笑ってからふ、と意識を飛ばした。
いきなり力が抜ける少女を、支えようとすれば、それは自然と俺が少女を抱きしめる様な形になって。その事実に気づいた時、俺の心臓は馬鹿みたいに鳴る。


「お、おい!総羅!」


揺すっても、名前を呼んでも寝息でしか答えない総羅に情けなくも、まじかよなんて呟いてしまった。
このまま朝を迎えるなんて、心臓もたねえ。ついでに総悟にこんな場面見られたら本当の意味で心臓もたねえよ。絶対殺しに来やがる。つーか殺される。
どうするか、とぐるぐる頭を回転させる。そうしたら一つの答えに辿りついた。

こいつを抱っこして部屋に連れてけばいいんじゃね?

さすが、俺。と自画自賛して上半身だけ起き上がる。
それでも全く起きる様子のない総羅の睡眠力はどうなってんだ。なんて、くだらない事に思考を使ってしまった。
そして、いわゆるお姫様抱っこという抱き方をする事になんとか成功した俺。
だけどもホッとしたのもつかの間だった。いきなり俺の首に絡まる腕。何事かと見れば、俺に捕まってる様だった。
目は開いていない。寝息も聞こえる。どうやら無意識みたいだ。でもその無意識のおかげで、俺の心臓はまたうるさく鳴る。
こんなガキに、なんでだよ。

そろそろ気づきたくない、気づいてはいけない感情に気づいてしまいそうで。
なるべく俺は総羅を見ないようにして、広間の襖に手をかけた。




(今日一日で俺は奴を何回"女"として見たのだろうか)




2011/02.20




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