結局あいつらは、昼飯の時まで帰って来なかった。
そして僕がもっとも驚いたのは、教室に戻って来た時彼らは前からの友達だったかのように親しげに話していたのだ。
あんなに人見知りなNにトウヤは何をしたんだ。
そんな疑問が浮かんだ。
そして、楽しそうに話すNとトウヤを眺めていると僕の心はモヤモヤしだした。


(僕が最初に友達になったのに)


心底楽しそうなNにムッとする。
きっとこれが、世で言う嫉妬というやつなんだろう。
そして僕は気づきたくもない事に気づいてしまった。
すごく楽しそうにNと話している彼に。トウヤが分かりやすいのか、はたまた、幼なじみだからなのか、きっと答えは後者なんだろうけど。
小さくため息を零した時、ばちりとNと視線が合った。
思わず固まってしまう僕。


「チェレン君!」


笑顔でこっちに走ってきたN。
彼がトウヤと話しをしているのに僕に気づいてくれた事が嬉しくて。
さっきまでのモヤモヤが嘘みたいに晴れていった。


「N、どうしたの?」

「チェレン君の言った通り、トウヤ君はいい人だったよ!」

「…そっか」

「こんなにトモダチ出来たのチェレン君のおかげだよ!」


無邪気に笑うNに、僕の心は痛んだ。
正直、彼の友達は僕だけでいいと思っていたから。
嫉妬深くてごめんね、心の中で僕は謝った。


「お昼、三人で食べようか」


トウヤのその一言で、僕達はお昼を一緒に過ごす事になったのだった。



「僕ね、初めてトモダチとご飯を食べたんだ!」

「へー」

「一人より断然楽しいね」

「なら、これから俺が一緒にお前と飯食ってやろうか?」

「本当かい!?」

「………」


完全に僕は茅の外だ。二人で楽しそうに話しているのをただ見てるだけ。
僕はどちらかと言うと、話し上手ではない。
話し上手なトウヤと僕、どちらが話しをして楽しいかなんて聞いたらもちろんトウヤで。
つまらない、Nにだけはそう思われたくなかったから僕は黙って、箸を進めるしかなかった。


「チェレン君、元気ないね」

「へ?」


いきなり話しをふられ、マヌケな声を出してしまい、ちょっと羞恥におわれる。
トウヤが小さく笑ったのを、僕は見逃さず、ギロリと睨みつける。


「何かあった?」


不安げに聞くNに、僕はなんでもないよと微笑む。
ならよかったと、またNも微笑んだ。


「Nってチェレンの事どう思ってるの」


トウヤがいきなり口を開いたかと思えばなんて事聞くんだ。
でも僕もその質問の答えが気になり、口をださずにいる。


「チェレン君の事?」

「うん」

「大好きだよ」


かああっ。
顔に熱が集まってきた。
まさか、だった油断した。
慌てて赤く染まる顔を隠すように僕は手で覆った。
(やばい、うれしい)


「そっか、じゃあ俺は?」

「トウヤ君も好きだよ」

「………」

なぜか納得がいかないという表情をするトウヤ。
トウヤにNが好きだと言ったのは気にくわないが、それよりも僕に大好きだと言ってくれた事が嬉しくて、まだ熱が残る顔をどう冷まそうか考えるばかりだった。


「チェレン、話がある」


顔の熱を冷ますかのように、ぱたぱたと扇いでいた手をがしりと掴まれる。
またか、トウヤに手を引かれるまま、少しNと距離を置いたところで彼は止まった。
不思議そうにこちらを見つめるNを横目でみながら、何か用かと言った。


「ごめんチェレン、俺Nの事好きになったかも」


Nと話しをしていた彼がよく笑っていて、だいたいは予想はついていたはずだった。
けれども本人に直接言われるのは結構辛いものがあって。
どうやら僕らはライバルになってしまったようだ。


「はは、トウヤはずるいよ」

「…ごめん」

「協力、してほしかったのにな」

「………」

「でも僕、トウヤに負けないからね」


布告

(トウヤがうけてたつよ、と呟いた。
これで僕らは正真正銘のライバルになったのだった。)




2010/10.12









 
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -