トウヤとチェレン(学パロ)
不良トウヤといじめられっ子チェレン
「なんでやりかえさねーの?」
そこらじゅうが痛い。身体の全部が悲鳴をあげてる。あと30分は壁に身体を預けて座っているこの状態から動けないままだな、と他人事のように思った。
そんな僕に手を差し延べる訳でもなく、同情する訳でもなく、問い掛ける幼なじみに僕は薄く笑った。
「なんでって、そりゃ僕はトウヤみたいに強い訳でもないし」
「強くなりたいの?」
「暴力は嫌いだな」
聞いておきながら心底興味なさそうに、幼なじみは相槌をうつ。
マウントとっちゃえばこっちのもんなのに何でそれをしないかなー、とのんびり口にするこいつは何十秒か前の僕の話を本当に聞いていたのか問い詰めたい。
暴力を暴力で返してしまえば僕もあのクズ共と同じになってしまう。あんな奴らと同じ立ち位置になるくらいなら永遠といじめられっ子のままのほうが何倍もマシだ。
口内から溢れる鉄の味に堪えられなくなりその場に吐き出せば汚いと言われた。
「さてと、俺はもう帰るけどお前どうする?」
「…身体中痛くて動けないんだけど。見てわかるでしょ」
「あっそ、じゃあ先に帰るわ」
「うん、じゃあね」
「おー、また明日なー」
ひらひらと手を振り、遠くなる背中に薄情者と毒づいた。どうやら聞こえてたみたいで足を止め、こっちを見つめる。僕もなんとなく見つめ返す。
「手、かしてほしいの?」
「……別に」
「ふーん、まあいいやじゃあね」
僕を追いて今度こそ奴はさっさと帰っていった。本当に薄情な奴。
でもきっと僕が一言トウヤに助けて、といえばあいつはいとも簡単にいじめっ子達を倒してしまうんだろう。
でも僕がそれをしないのは、いつまでもあいつに頼る訳にはいかないし、甘える訳にもいかないから。それに暴力は嫌いだ。
なんて、言い聞かせてるけど一番の理由はプライドが許さないってだけのこと。
それだけ。
20120802
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