もうすこし、(高緑)



最初は好きでもなんでもなかった。ただ面白そうな奴だなあって理由で付き纏っていただけ。それまで俺はちゃんと女の子が好きだったし、男相手にドキドキなんて有り得ないし、まあそれが普通なんだけど。
でもたまに見せる笑顔とか、いつもつんけんしてるのに急にデレてくるとことか、アホみたいに占い信じてるところとか、言い出したらきりがないくらいにそいつが好きになっていた。



「さっさとしろ、高尾」

「ちょ、そりゃないぜ真ちゃん!」



普通に坂道を自転車でこぐならまだしも、後ろにリアカー繋いで、ましてや自分よりでかい男乗せてたら普通の何倍も体力使うし疲れるのは当たり前だ。それを気にする様子もなく呑気におしるこを飲む緑色に嫌気がささないのはつまり惚れた弱みというやつなのかもしれない。
最近は重症で、一緒にいれたらそれでなんてどこの乙女だっつうの。俺らしくない。



「よっしゃあ!下り坂だ!」

「あんまり調子にのるなよ、スピードを出しすぎたら事故に」

「いくぜえええ!!」

「聞けよ!!」



更にスピードをあげようとペダルを馬鹿みたいにこいだ。後ろから文句が飛んでくるも関係ない。今の俺は風だ。風以外の何者でもない。
後ろに視線を向けたらあちらこちらと真顔で左右に揺れる緑間がいた。それだけでもシュールで笑えてくるのに、ワイシャツがおしるこでベタベタだったのに気づいた瞬間もう限界だった。
声を出して笑ってやった。



「高尾…、貴様のせいなのに何故笑っているのだよ」

「あははははは真ちゃんおしるこまみれ!!ばっかみてー!!」

「あ、おい高尾!!前を見ろ馬鹿!」

「へ?」



涙を拭いながら緑間に言われた通り前を向けば歩行者。おいおい嘘だろと慌ててブレーキを握りながら、ハンドルの向きを変えた。
瞬間、身体が宙に浮いた感じがしたと思えばすぐにそのまま地面に顔面から叩きつけらる。ずきずきと痛む身体なんかより真ちゃんが心配で、すぐに横たわるあいつをお得意のホークアイで見つけ駆け寄った。
俺が大丈夫かと聞くが早いか真ちゃんが俺を躊躇いなくぶん殴ったが早いか。



「だから調子にのるなと言ったのだよ!!」

「わりーわりー!!それより真ちゃん怪我ない?」

「俺は大丈夫だが高尾お前顔、擦りむいてる」

「顔面からいったからなー!」



落ちた場所が河川敷でよかったねなんて言ったらもう一発食らいました。一応怪我人なのに容赦なく俺をぶん殴る真ちゃんにキセキの世代ってすげぇ!と感動するのだった。
でもそのあと本当に小さな声で怪我、大丈夫かと呟いた緑間。
それをあえて聞こえないフリをしてなにと聞き返したが知らん、とそっぽを向いてしまった。酷いことしてんなってのは分かってるんだけど、どうも真ちゃんの反応がおもしろくて、真っ赤になってる耳がおかしくて、おもわず口元が緩んでしまうのでした。

もう少しこの関係も悪くねえな、と赤くなる空を見上げた。




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