依存(高←緑)



「好きだよ」


それは全く感情なんてこもってなくて無機質だった。ずっと求めていた言葉のはずなのに嬉しいとは思えず、胸のあたりがズキズキと痛む。好きだったそいつの笑顔も今はどうだ。俺をイラつかせる材料にしかならない。何か言おうとしてもなんにも言葉は見つからず、俺もあいつと同じように何も面白くもないのに、泣いてしまいたいのに、笑った。


「高尾」

「なあに」


あいつはもう俺を真ちゃんとは呼ばない。あいつはもう前のように俺に笑いかけることはない。
きっともう高尾は随分前から俺を緑間真太郎とはみてないんだろう。ただの面倒くさいやつとしかみてないんだろう。そんなこと自分が一番わかっているはずなのに。心のどこかでこいつだけは俺を、俺自身をちゃんと見てくれていると思ってた。そんなのただの独りよがりにすぎないのに。


「高尾‥‥」

「俺はお前が好きだよ」

「高尾、」

「だから、もういいでしょ?」

「な、にが」


その言葉がどんな意味を示すのか。そんな事はもう分かってる。なのに分からないふりをして。自分が惨めで仕方なくて。最後の最後まで高尾を手放したくなかった。
高尾が困ったように笑うから、もっと困らせてやろうと泣こうとしたけど涙は出なかった。



「俺ね、もうお前と一緒にいるの疲れちゃった」

「‥‥‥」

「緑間のことは好きだよ、でもね疲れちゃったの」

「‥‥そうか」


ごめんね。高尾は俺に謝った。これはなんの謝罪なのか。俺を傷つけない為の最後の優しさなのか。そんなの俺を追いつめるだけなのはお前は分かっているのか。
優しくしてくれるなら、最後まで俺を気づかってくれるなら、そんなこと言わないで欲しかった。真ちゃん、その一言でいいから。その一言だけで俺は救われるから。あんな空っぽの好きなんていらない。謝罪なんていらない。ただ、前のようにあの笑顔で俺の名前をよんでほしい。


「お前は俺に依存していたはずだろう、何故今になってそんなことを言うのだよ」

「お前は俺を必要としていた。それは今もこれからも変わらないはずだ」

「だから、」

「なあ、」


「本当に俺はお前に依存してた?」



頭を金属バットで思いっきり殴られたような、そんな衝撃だった。依存していただろう、だって、あんなに俺につきまとって。
随分前の俺たちの事を必死に思いかえす。必死に自分に都合がいいことを思い出そうとしたけど何も出てこなかった。なにかないか、そう思うも頭の中で数秒前に放った高尾の言葉が邪魔をする。

"本当に俺はお前に依存してた?"

違う、違うではないか。本当に依存していたのは目の前にいる、この、高尾、ではなく、本当は、
視界が歪み、瞬きをすればそれは溢れでた。今までずっと流すことの出来なかった涙がやっと溢れたのだ。それでもこの涙を利用しようという気にはなれずただただ、視線の先にいるあいつから目をそらす事しか出来なかった。






2012/12.28

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