宮地と緑間





指を舐めてる話です。一応注意。




「お前って手弱かったりすんの?」

「は?」



今日は珍しく部活がなく、宮地さんに誘われるまま家に行き、一息ついた時に先輩は突然それを口にした。
何故そんなくだらない事を気にするのか、そう問おうとしたがそれは突然俺の手の平を握る先輩に邪魔されたのだった。ぐにぐにと強弱をつけ握ってみたり、優しく撫でてみたりと好き勝手に弄られる。特に不愉快な感じはしなかったので俺は黙って見つめるだけ。



「なんか感じるか?くすぐったいとか」

「いえ、何も」

「ふーん」

「そろそろ離していただけますか」



でかい男二人が手を握っているなんて妙な光景だと思う。それに俺もなんだか少し恥ずかしい。振りほどこうとすれば、指を絡められて所謂恋人繋ぎとやらをやられる。途端に何故か心臓がバクバクとうるさくなった。
手の平がじんわりと汗ばむ。視線を手から先輩に移した時だ。先輩は手を繋いだままそれを口元に持って行き俺の手の甲をべろり、と舐めた。



「なっ…!」



慌てて今度こそと振りほどこうとするが、二度目の抵抗も押し倒される事であっさりと封じられてしまう。
先輩の整った顔が目の前にあるだけで俺の顔に熱が集まった。相変わらずうるさく鳴る心臓を静める前に先輩は次の行動に移した。



「みやじさ、本当いい加減にしてください…!」

「うるせーよ」



宮地先輩は俺の指を吐き出される文句のあと口内に埋めた。そして舌でゆっくりと舐める。ぴちゃり、と鳴る卑猥な音が嫌で耳を塞ぎたかった。が、もちろん俺の片手は宮地さんの口の中にあり、耳を塞ぐことなんて出来るはずはなく。目を閉じてみれば、羞恥のせいで溜まった涙がぼろりと零れる。



「ひぁっ!」



舐めるのに飽きたのか、先輩は急に指を吸いあげた。突然のことで、少しばかり高い声が出てしまった。恥ずかしくて唇を強く噛む。
なんで俺は先輩にこんな事をされているのか。なんで俺がこんな目に。今更嘆いても仕方ない事だが、嘆かずにはいられなかった。



「開発の予知ありだな」

「何を馬鹿な事を!!」

「指だけでイけるようにしてやるよ」



先輩の口端からはだらしなく唾液が零れていた。それすらも先輩にかかれば艶っぽくしてしまう。この人の色気は本当に底知れず、視線が交わり小さく笑うだけで胸が高鳴るくらいだ。
このままではなんだかいけない扉を開いてしまいそうで。どうにかしなければ。
片手で見えない何かを必死に探していたら指先が硬い物に当たる。もうなんでもいい。どうにでもなれ、とそれを思いっきり先輩の顔面目掛けて投げつけた。



「いってぇ!!!」



どうやら俺が投げつけた物は、今人気のアイドルが表紙を飾っている雑誌で、しかもその角が綺麗に先輩の顔面に当たったらしい。
先輩が一瞬怯んだ隙に、ここぞとばかりに手を引いた。やっと解放された指は唾液がつき、少しばかりふやけている。それを先輩の服で遠慮なく拭き、俺はすぐさま先輩から距離をとった。
鼻を押さえながら、涙目でこちらを睨みつける先輩。少しだけ罪悪感が湧くが、俺は何も悪くない。むしろ被害者と呼んでもいいはずだ。



「緑間テメェ…、先輩になんてことすんだコラァ!」

「先輩こそ俺になんてことするのだよ!!ふざけるのも大概にしろ!」

「お前敬語どこ行った?あ?」

「と、とにかく俺はもう帰ります!!さようなら!!」



置いてあった自分の鞄を引ったくるようにして取り、すぐさま先輩の部屋を飛び出した。扉が閉まる瞬間、あいつ絶対犯す、と地を這うような低い声で呟いた宮地の声など緑間には届いてないようだった。




2012/1024

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -