高尾と緑間





「真ちゃん、一緒に逃げようか」



何を言い出すのかと思いきやまたくだらない事か。馬鹿馬鹿しい、だいたい逃げると言っても何処へ?金はどうする?そもそもどう生活するのだ。そんなの無理に決まってるではないか。そうは思うも、口を開いても出るのは二酸化炭素だけ。

俺達は男同士だ。どう足掻いても周りが受け入れてくれるなんて不可能だ。何処に行っても否定され、何処に行っても汚い物を見るような視線をぶつけられ、それでも俺を庇いにこにことしていた。こいつは優しい、そんな優しい高尾が平気なわけがないのだ。
瞬きをした目からはぼろり、と雫が落ちるのをぼんやり眺める。



「誰も俺達を知らないところへ行こうよ」

「そこで一緒に暮らそう」



高尾の顔は随分と疲れていた。
目の前の男は笑っているのに、泣いている。不思議だ。やむことを知らずにぼたぼたと零れるそれに触れてみる。泣くな、なんて言える訳がなかった。



「海にでもいくか」

「そしたら、」



お前の涙もきっと海の水と溶け込んで分かりやしない。
ゆっくりと頷く高尾に俺も笑った。



2012/09.28

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