06


『…って事があったの。大変だった…』

「ひゃあ〜!そうだったんだァ…!!」

昨夜の事を軽く話すと、藍良くんは少し頬を染めながらにこにこと笑った。
なにがそんなに嬉しいのかは分からないけれど、とりあえず私も軽く笑った。


『あんまり話しやすいから、びっくりしちゃった。私が思い込んでただけで悪い人ではないんだね。』

「うんうん、そうなんだよォ〜!ちょっと怖いかもしれないけど、意外と優しい人だと思うよ!…特になまえちゃんには。」

『…なんで私?』

「え?!聞こえてたのォ?!!」

『うん、ばっちり。』


私がそう答えると途端に慌てふためいた藍良くんに首を傾げる。どうしたのかと口を開こうとした時、この間椎名さんが言っていたことを思い出した。


『…藍良くん、知ってたの?』

「な、何がァ?!!?!」

『その…私があまりちゃんとご飯を食べてない事。』

「……へ?」


驚いた顔のまま固まった藍良くんに私は改めて説明をする。…何か変な事を言ってしまっただろうか?


『私がちゃんとご飯食べてないから、天城さんに頼んでご飯を食べに行かせたってことだよね?ごめんね、気を使わせちゃって…』

「…え、あ、え〜っと、そうじゃなくてェ〜…?」

『でももう大丈夫だよ。これからはなるべく食べるようにするから。』

「……うん、もうそういうことでもいいよォ…」


なんだか呆れた様子の藍良くんに少し笑いかける。すると藍良くんもこちらを見て、そういえば、と口を開いた。


「燐音先輩とのお話、楽しかった?」

『え?…うん、楽しかった。』

「そっかァ……次いつ行くとか、あるの?」

『あるよ。』

「やっぱり、ないよねェ……ってあるの?!!」


ガタンと音を立てて椅子を倒した藍良くんに拍子抜けしたまま何度か頷く。
昨日夕飯を食べ終わった後、天城さんに木曜もどうかと誘われたので了承したのだ。ご飯も美味しかったし、なんだかんだいっても天城さんの話は面白いし話しやすい。
未だ立ちっぱなしの藍良くんにそう伝えると、ほっと息をついてまた椅子に座った。


「そうなんだァ…よかった!もう、ビックリささないでよォ!!」

『いや、ビックリさせたかったわけでは無いけど…』


苦笑いしながら私も椅子の位置を直した。
明日、何を食べようかな。
そんな風に考えていると、なんとなく明日が待ち遠しくなった。


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