かわいいしょうちゃんはログアウトしました。ちょろっと背後注意。














きもちわるい
やけに乾いてかさついた手が身体を弄る。俺の平熱は36.5℃。それより上の相手の体温に皮膚は拒否反応を表して鳥肌が立つばかり。変わらない自分の温度とは対照的に、対象的に?上昇していく汗ばむ、手。不快感以外に何を感じれというのか。気持ち悪い。きもちわるい。拘束されていなければすぐにでも振り払ってやるのに。手は下からシャツの中へと入り。柔らかさも膨らみもない真っ平らな胸を弄った。興奮していますと一目で、いや肌で感じさせる荒い息が首にかかる。馬鹿じゃねえの。男の胸なんて触って何が楽しいのかね。好きだからとか初めて見たときからずっと可愛いって思ってた、なんて譫言のように繰り返す姿は、滑稽と表す外無く。誰を見ているのか判らない瞳はギラギラと安物の玩具みたいに光っている。男に襲われるのは真に遺憾ながら初めてではない。近所に住んでた頭がおかしいと噂の年齢不詳のオジサン。脂ぎったでかいカメラ持った実年齢より10は上に見えるデブ。見るからに怪しい奴からぱっと見普通の人まで。どいつもこいつも同じ目をしている。俺の何がやつらのお気に召すのかね?低めの身長か歳よりは確実に下に見られる童顔のせいか。男に襲われてる状況でも、冷静な思考が保てるぐらいには慣れてしまった悲しいことに。
そういやコイツなんつったっけ。アイドルコースなのはなんとなくわかるが、それ以上の情報は容量が多いとは自分でも思っていない頭では検索されるはずもない。一応はアイドルを目指す身である以上、平均よりは優れた見た目で愛?を囁く顔は好みのやつが見れば格好良いのかもしれない。腹立たしいことに背も高いし。俺はこんな目がイッちゃってるような奴は絶対に御免だけど。あ駄目だ顔見てたら吐きたくなってきた。いっそぶちまけてやったら相手が萎えてやめねぇかな。でも更に興奮でもされたら面倒くさいってか、こっちのメンタルが崩壊しそうだ。唇を噛んで耐えていたら、キモチイイ?と壁に押さえつけられ顔が近づいてきたので限界まで首を横に捻って直視を避ける。そうしたらほんと可愛いと顎から首筋にかけてを滑った舌で舐められた。ほんと馬鹿じゃねぇの。気持ちいいわけあるか吐きそうなんだよ、こっちは。先程から体を支配するのは恐怖よりも相手への嫌悪、侮蔑、嘲笑。愛は偉大ではあるんだろうけどさ。愛っていえば全部許されるとか勘違いだから、それ。男が男に好きだって言って、襲って?どこかの世界ではそれは愛故にって許されんのかもしれないが、残念ながら俺が居る世界では只の性異常者の変態行為でしかない。俺だって男だから、性欲とかあるけどさ。俺なんかに感じてどうすんの。可愛いって言うならもっと可愛い女の子なんて一杯いんじゃん。せっかくアイドル目指そうってぐらいの容姿なんだからさ。男だから女の子よりは問題になんないとでも思ってンの?妊娠とかしないから?今更言葉が通じるとは思わないし何を言ったって無駄だろうけど、やっぱりお前は俺を愛してるとかじゃないよ。お前からは残念ながら愛じゃなくて、性欲しか感じとれねぇよ、悪いな。


"…………わいい可愛い、女の子みたいだね"
"……→チッ。なんだ男か、"

服の中へと伸びていた手が今度は腹を通り下へ下へと向かう。擦り付けるよう押し付けられるおぞましい感触は硬度を増すばかり。反応を示さない自身を無理矢理に弄られ、下肢に手が掛かり嫌悪侮蔑嘲笑に隠れていた恐怖心が微かに頭を擡げる。古い記憶と、感触が、臭いが、温度がリンクする。僅かな波紋は直ぐに周りを巻き込んで広がっていき気持ち悪い程体に染み込んでいく。気持ち悪い気持ち悪い怖いきもちわるいきもちわるいきもちわるいこわいキモチワルイキモチワルイ怖い恐いこわい、コワイ!止めろやめろ触るなやめて誰でもいいから何でもいいからやめていやだやめろ。このまま犯されるなんて死んだ方ましで、この状態を見られるのは死ぬ程嫌だった。なぜどうして。たいしたことではない。悔しいことに珍しくなんかない。ムカつく腹が立つキモチワルイ苛々する気持ち悪い馬鹿らしいきもちわるいきもちわるいこわい。虚勢などではなかった筈だ。愛?性欲?そんなものは鼻で笑ってやって。唇を噛み締めて声を押し殺して相手への蔑みだけを瞳に乗せる。相手の昂っていく興奮とは反比例的に冷えきっていく。こんなの、たいしたことじゃあ、ない。俺は男、なんだから。女の子でも、小さなこどもでもないん、だ。ただちょっと変態に襲われぐらいで。抱くのは相手への嫌悪憎悪侮蔑軽蔑嘲笑嘲罵だけでいい。気持ち悪いきもちわるいん、だ。怯えるな怖がるな殺せ殺せころせ。心まで支配されてしまうな。だけど手が、手が、手が。その怪物は一枚一枚服を剥ぎ取っていき俺を裸にして或いは賛美し或いは罵声を浴びせる。透明な腕が何本も身体を押さえ付ける。嘘、違う腕は二本?目の前にいるのは誰だ?わからなくなる。粘膜を擦る動きに悲鳴を上げそうになり喉に沈殿。声を上げてはいけないよ、荒いのに不思議と平坦な声がそう言った。悲鳴を上げるな声を漏らすな叫びを殺せ涙を流すな。泣いたって叫んだって助けを求めたって、どうせ。勘違いをしたらしい相手はこういうの好きなんだ?とより動きが速められる。きもちわるいきもちわるいきもちわるい。僅かに漏れてしまった声は当たり前に悦びではなく、誰かに助けを求めるものでもない。声を上げたって泣き喚いたって名前を呼んだって、今更。張り続けた何かが溶ければ残るのは絶望と諦めだけ。呟いた言葉の先は目の前のこいつへであのときの怪物へでいつかの日の自分へでどこかにいる誰かへだ。







いつだって、誰も助けてなんてくれなかったじゃないか。





「モブ翔で男子生徒に無理矢理ヤられそうになる翔ちゃん(微えろ)」
まっちさまに捧げますリクエストありがとうございました。返品可。