翔ちゃんとの間に子供が出来た。
まだあまり膨らんではいない平らなお腹を撫でると、新しい命の分だけ暖かみを感じて思わず笑みが溢れた。この中に、翔ちゃんとぼくの愛が詰まっているの。いとおしい、こ。ぼくの翔ちゃんの次に愛しくて尊いいのち。ああ、今、動いたみたい。しあわせ。愛し合う二人の間に不可能はないんだよ。科学も医学も宗教もぜんぶ馬鹿らしい。男同士に子供は出来ない、双子で、兄弟で愛し合うなど愚かしい汚らわしい。愛が美しい尊いものだと言うのなら、僕らの愛だって敬ってよ。まあどうでもいい人たちに何を言われたって痛くも痒くもないのだけど。こんな素敵な奇跡が認められないのは悔しいを通り越していっそ憐れに感じる。処女受胎と同じくらい、もしかしたらそれ以上に凄いことなんじゃないかな。だとしたら、このこは神様の子供?そんな見ず知らずのやつの子供はいらないけど。僕が欲しいのは翔ちゃんの子供だけ。まあこの子は僕と翔ちゃんの子供に決まっている。僕と翔ちゃんの愛の形。愛の結晶。愛し合った証。セックスなんか必要ない。もっと綺麗で清らかで純粋ななにか。愛と性欲を切り離せないなんてみんなおかしいよね。生殖本能に任せた行為に愛があるっていうの。ましてや男同士だとしたら、セックスなんか余計必要ないでしょう。快楽を求めるだけ求めることが、愛?笑わせないでよ。愛を騙るな穢らわしい。





"……ひっ、あぁ…んっ…"




白い身体が、脚が、寝台の上で魚のように跳ねていた。ぼんやりとした視界の中でその白さだけがはっきりと浮かび上がる。触る肌はじっとりと熱い。汗となにか他の匂いが思考を鈍らせた。心臓の上に顔を寄せれば、生きている音がする。浅い呼吸を繰り返して頬に手を伸ばせば髪が乱れて、獣じみた声を上げているのは、翔ちゃ、ん?


一気に意識が覚醒する。なに、あれはなに。僕は、何をしてい、るの?何を見ているの。嫌な汗が背中を伝って、心臓が苦しそうな悲鳴を上げていた。視線を下に逸らせば、気持ち悪くて吐き気がして涙が滲んだ。
汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い!いやだいやだいやだいやだいやだ!!嘘、だあんな、見たくない。僕はあんなの、したくない、から。このキラキラした綺麗な想いと、動物らしい人間らしさは別のものだって。あんな行為の果てに僕らは産まれて、今も人は繁殖を続けて。知識としての性交と生理的欲求。全部が教科書と本の中のもの。僕と翔ちゃんにはあんなのとは無縁なのに。僕には関係ない、その証拠がこのこだから。だって、この愛は、美しいもの、でしょ、う?僕は何度あんなものを望んだの。何度知らずに汚れてきたの。何度、翔ちゃんを汚して、きた、の。このこがいれば、必要ないって。綺麗なだけの愛でいられたはずだったのに。特別な僕たちだから許された特別なこ、と?そう言って何度翔ちゃんを裸にしてきたの。汚いのも穢らわしいのも愚かしいのも全部全部ぜんぶぜんぶぜんぶ。あんなに愛おしかったものが、ただの不気味なものへ変わる。宝物が塵以下の忌むべきものへ代わる。僕の愛はなにに、か、わる?産まれなくていいよ、ぼくはもう満足なの。君はいればいいだけ、だって証ででももうここには居られないんだね。
ポタポタと垂れた液体がシーツを汚した。


あ、ああ流産しちゃっ、た。


















「頭のおかしな薫くんと翔ちゃんによる薫→翔か薫翔」
ストーカーをさせて頂いている抹茶さまに捧げます。リクエストありがとうございました。返品可。