2012/08/08 12:24 ごぽっ、ごぽ、ごぽ、っ、 ファ、シ、レ。 言葉を知らなくても音階だけは聞き分けられた。どうやらぼくは、耳がいいみたい。身体を丸めて漂って、何処かに繋がれ囲われていた。瞼は開かず、声も出せない。耳は絶え間無く水音だけを捉えていた。自分からは動くこともできない。でも恐くはなかった。一人じゃないと、知っていたから。わかっていたよ。ぼくはずっとぼくたちだって。 漂い浮かびながら、ぶつかり、触れて、もう一人の存在を知る。今触れたのは脚?それとも腕?ここはあたたかくてやさしくて。二人には少し狭いかもしれないけれど、心地好くて。 君はどんな姿なの?どんな声をしているの?自分の姿すら知らずに、ただただまだ見ぬ相手に思いを馳せる。はやく君とおはなししてみたいな。君だって、ぼくがいることは気付いているんでしょう?すると応えるみたいに、相手の身体がやんわりぶつかった。 ーー×××。時折、とおくから声が聞こえてきたけれど、聞こえないふりをしていた。不意に触れた柔らかいものをキュッと掴む。これは多分、手、なのだとおもう。ふわふわとあたたかい。もう少しだけ、此処で微睡んでいたい。×××、………やく、………う××て…×いで。聞こえる声は段々大きく、間隔は狭まってくる。呼んでいるのは、だれ?ぼくはまだ眠っていたいのに。 "おめでとう、おまえは生き残った" 繋がれた紐は、切り離される。繋がれたて、は引き剥がされる。 大きくにんまり笑った口。黒い月の裂け間から、何かがぼくに突き刺さり、身体をじりじり焼いていく。いたいいた、い。はじめて声を上げて泣いて、叫んだ。 ぼくははじめてヒカリをしりました。 なつきとさつき。双子だったなら。 |