林檎にモザイク
2012/04/19 15:03





君と結ばれないなら、王子様になんかなりたくない。





僕は王子様よりもお姫様になりたかった。
そうして迎えに来てくれる、たった一人の王子様を待っていたかった。
可愛くてかっこよくて優しくて強い翔ちゃん。だけど翔ちゃんは僕の王子様でも、勿論お姫様でもなくて。どこかにいる幸せになるために産まれた、どこにでもいるお姫様のための王子様だった。翔ちゃんはいつかお姫様と出会ってしまう。翔ちゃんはお姫様を見付けて、お姫様も翔ちゃんに気が付く。魔女の呪いは王子様とお姫様には効果がない。荊の棘で囲んでもお城を氷で覆っても長い髪を切り落としても。幸せになるために出会う二人には意味がないの。呪いも祈りも願いも意味がないの。だってどうせ結末はひとつだけ。ガラスの靴を叩き割った。林檎を本物にすり変えた。人魚に脚はあげなかった。
それでも、翔ちゃんは。きっとお姫様を見付けてしまうんだ、だって翔ちゃんは、キラキラと輝いた王子様なんだから。お姫様がいなくちゃ、翔ちゃんの物語は始まらない。そんなの、おかしいでしょう?どんな悲劇的なおはなしより、こんな素敵な王子様がいるのに何も起こらないことの方がずっと悲劇的。
僕は悪い魔女?王子様の従者?それともただの村人B?王子様とお姫様のしあわせを見たり、見る前にしんでしまったりするんだろうね。きっとそんなどうでももいい役のどうでもいい末路なんて、皆どうでもいいだろうね。脇役のしあわせまで、誰も考えてはくれないよね。くれないよね。








どんなんだって那翔って言い張る





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