薫翔
2012/04/07 21:49





例えば翔ちゃんに嫌われたとして。
僕は全然平気だと思っていた。勿論、それは翔ちゃんのことをどうでもいいと思っているからではなくて、むしろその逆。僕が翔ちゃんを好きすぎるから。翔ちゃんに嫌われたってそれは変わらない。僕を嫌いな翔ちゃんだって、僕は、きっと大好き。僕が翔ちゃんを好きな気持ちと翔ちゃんとは関係が、ない。直接的には繋がらない。好きでいてもらえないなら、好きでいてはいけないなんて決まってはいないでしょう?愛してもらえないなら、嫌いになるなんてそちらの方が余程自分勝手で醜悪。好きでいてもらえた方が嬉しいに決まっているけれど。嬉しくなくたって苦しかったって僕は翔ちゃんが好きなんだもん。苦しくて嬉しくて翔ちゃんが好きなの。
だから、翔ちゃんに嫌われたって縁を切られてしまったって。全然平気だと、大丈夫なんだと思っていた。浅はかにも、本気でおもっ、てい、た。



"俺は、お前のことが本当はずっと大嫌いだったんだ"



たった、一言で世界は暗転、反転。内臓までもがぎゅるりと全て裏返る。眼球がずきずき痛むお腹が痛い頭が痛い吐き気がする吐きそう脚はもがれ腕は引きちぎられ脳内臓血管細胞から全てが破壊。僕という存在はあっという間に原子以下へと崩壊。どろどろぐちゃぐちゃびちゃびちゃ。身体は簡単に液体へ、形を保つことすら難しくなる。
あははは馬鹿みたいに簡単なことだったんだね。好きなだけ、は苦しいね痛いね、愛してくれないなら愛したくはないよ。無償の愛はあまぁい有償の愛で保証されていた。見返りを求めない愛は気持ち悪くて心地好かったよ。僕は当たり前に翔ちゃんが好きで大好きで愛してた。そんな世界の理も、一息で壊れてしまったね。
"ばか△な、◆×だよ"ばつが悪そうに或いは慌てて或いははにかんで或いは照れてそう言って。びちゃびちゃぐちゃぐちゃどろどろ。形がないから、受け止められないね。耳も鼓膜も骨までもう溶けてしまったよ。さあ、呪い言葉を吐く前に、残った舌を噛みきろうか。視界には黒とも赤とも白とも言えない物体がぼんやりと浮かび上がる。僕とは違った固体。たった一息で僕を壊して、吹き飛ばせる個体。"……………だい◆き、"どうせならこんな馬鹿げた脳内妄想ごと、壊してしまってよ。















薫翔ちゃんがヤンデレ×ツンデレだった場合取り返しのつかないことになりそう




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